
この記事の要点
- カスタマーサポートの仕事では、マニュアルにもとづく返信の下書き、言い回しの調整、長いやり取りの要約、資料に答えるチャットボットづくり、問い合わせの振り分け、返信の翻訳、問い合わせの記録の集計に AI を使える。
- マニュアルに答えさせるなら NotebookLM、返信を書き直すなら ChatGPT と Claude、問い合わせに答える仕組みを作るなら Dify、海外のお客様への返信を訳すなら DeepL が向く。
- お客様の名前や連絡先を入れる前に、使うプランのデータの扱いと社内のルールを確かめる。AI が作った返信は、担当者が読んで直してから送る。
目次6
この記事で扱うツール
問い合わせ対応の場面で使える機能が公式のヘルプで確かめられる5つのツールを選んだ。料金は2026年10月24日に作った TRAIL のファクトパックと、各社の料金ページの値だ。
| ツール | 得意なこと | 無料の範囲 | 最安の有料プラン | 会社で使うときのデータの扱い |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT | 文章の下書きと書き直し、CSV や表の集計 | 無料版あり。ファイルのアップロードは1日3ファイルまで | Go ¥1,400/月 | Business、Enterprise は初期設定で学習に使わない |
| Claude | 長い文書や会話の要約、Gmail をつないだ返信の下書き | Free あり。Sonnet と Haiku、ウェブ検索、ファイルの作成 | Pro $20/月(税別。日本向けの表示は税込み$22) | Team、Enterprise は初期設定で学習に使わない |
| NotebookLM | 読み込ませた資料だけを根拠にした、引用付きの回答 | 無料でノートブック100件、1ノートブックあたりソース50件、チャット1日50回 | Google AI Plus ¥725/月 | Google Workspace のアカウントでは、人による確認にも学習にも使わない |
| Dify | 自社の資料をもとに答えるチャットボット、問い合わせを分ける仕組みづくり | Sandbox は無料。メッセージクレジット200(1回だけ)、アプリ5個。自社のサーバーで動かす Community 版も無料 | Professional 1ワークスペース月$59(税抜き) | 提供元の LangGenius は、AI とのやり取りのデータを学習に使わないとしている。自分の API キーで使うモデルでは、学習に使われるかはモデルの提供元との契約による |
| DeepL | 文章とファイルの翻訳、製品名の訳をそろえる用語集 | 無料版あり。テキスト翻訳は月50,000文字、ファイルの翻訳は月1件 | Individual 年払いで月¥1,150相当(税込) | DeepL Pro のデータは DeepL の AI モデルの訓練に使わない。無料版で個人データを含む文章を訳すことは認められていない |
NotebookLM は2026年7月16日に名前が Gemini Notebook に変わった。この記事では旧名の NotebookLM で呼ぶ。
場面ごとの使い方
ここでのプロンプトは各ツールにこう頼めるという例だ。[ ] の中を自分の内容に差し替えて使う。TRAIL は出力を確かめていないので、回答の中身は必ずマニュアルや元の記録と照らし合わせる。返品や返金の可否、契約や法律に関わる判断は AI に任せず、社内の決まりと担当者に確かめる。
マニュアルやよくある質問をもとに返信の下書きを作る
製品のマニュアルやよくある質問の答えを調べてから、問い合わせに返信するときの場面だ。NotebookLM は読み込ませた資料だけを根拠に、資料のどこを使ったかを示す引用付きで答える。マニュアルの PDF や Google ドキュメントを1つのノートブックに入れ、次のように頼む。
次の問い合わせに答えるために、ソースから関係する箇所を探してください。
問い合わせ:[お客様の問い合わせの文。名前や連絡先は消しておく]
1. 答えに使える箇所を、引用を付けて箇条書きにしてください。
2. そのうえで、お客様への返信の下書きを丁寧な言葉で書いてください。
ソースに書かれていないことは書かず、「ソースに記載なし」としてください。答えが違うと思ったら、引用を選んでソースの該当箇所を確かめる。Google ドライブから取り込んだソースは数分ごとに自動で同期されるので、マニュアルを直せばノートブックにも反映される。チームで使うときは「共有」から「閲覧者」の権限で渡せる。手順は NotebookLM の使い方にある。
返信の言い回しやトーンを整える
書いた返信を、お詫びの気持ちが伝わる丁寧な文面に直したいときの場面だ。ChatGPT は文章の下書き、書き直し、要約を会話で頼める。下書きを貼って、次のように頼む。
次の返信の下書きを、お客様に送る文面に整えてください。
状況:[お客様が困っていること]
トーン:丁寧で、落ち着いた言葉にしてください。
下書きにある日付、金額、手順は変えないでください。
直した箇所が分かるように、最後に一覧にしてください。
[返信の下書きを貼る]OpenAI のガイドは「フォーマル」「親しみやすい」のような言葉でトーンを指定するよう勧めている。同じ応対の決まりを何度も使うなら、ChatGPT のプロジェクトの指示に書いておける。プロジェクトの指示はそのプロジェクトの中だけで使われる。例は ChatGPT の使い方にもある。
長いやり取りを要約して引き継ぐ
何度も往復した問い合わせを、別の担当者に引き継ぐときの場面だ。Claude は長い文書や会話の要約ができる。やり取りの全文を貼るか、テキストのファイルを添付して、次のように頼む。
次の問い合わせのやり取りを、引き継ぎ用にまとめてください。
1. お客様が困っていること
2. これまでに案内したことと、その結果
3. まだ答えていない質問
4. 次にすること
やり取りにない内容は書かず、分からない点は最後に一覧にしてください。
[やり取りの全文を貼る]メッセージが長すぎると「メッセージがこのチャットの長さ制限を超えます」と出る。そのときは内容を小さく分けて送るか、新しい会話を始める。手順は Claude の使い方にある。
メールの問い合わせに返信の下書きを作る
Gmail に届いた問い合わせに、返信の下書きを用意しておきたいときの場面だ。Claude は Gmail をつなぐと、メールの検索と読み取り、下書きの作成を会話の中で頼める。Gmail をつないでから、次のように頼む。
Gmail で件名に「[問い合わせ]」を含む、今日届いたメールを探してください。
それぞれについて、次のよくある質問の答えをもとに返信の下書きを作ってください。
よくある質問にない内容のメールは、下書きを作らずに一覧にしてください。
送信はせず、下書きを見せてください。
[よくある質問の答えを貼る]Claude はメールの送信、返信、転送の前に、初期設定では利用者の承認を求める。Gmail の添付ファイルの中身は読めず、読めるのは添付ファイルの情報だけだ。手順は Claude の使い方にある。
マニュアルをもとに答えるチャットボットを作る
お客様や社内の担当者が、製品の使い方を自分で調べられる窓口を作りたいときの場面だ。Dify の「Knowledge」は自社の資料を取り込み、AI が答えるときの根拠にする。Dify のドキュメントは製品資料をもとに答えるサポートのチャットボットを使い道に挙げている。AI が答える前に資料から関係する部分を探して答えに使う仕組みを RAG という。
「Knowledge」で資料を取り込み、「Studio」で「Chatbot」を作って「Context」にそのナレッジを加える。指示の欄には次のように書く。
あなたは [製品名] のサポート担当だ。
渡された資料の内容だけを使って答える。
資料に書かれていないことは「担当者に確認しますので、[問い合わせ窓口] からご連絡ください」と答える。
答えは3文以内で、丁寧な言葉で書く。返金や交換の約束はしない。「Add Features」で「Citation and Attribution」をオンにすると、答えに出典が付く。公開する前に「Debug and Preview」で質問を入れて確かめる。作ったアプリは Web アプリ、API、Webサイトへの埋め込みの形で使えるようにできる。手順は Dify の使い方にある。
決まった答えを返したい質問を登録する
営業時間や問い合わせ先のように、答えを毎回同じにしたい質問があるときの場面だ。Dify のアノテーションは決めておいた質問と答えの組を登録すると、似た質問が来たときに AI に作らせず、その答えを返す。「Orchestrate」→「Add Features」でオンにし、どれだけ似ていれば返すかの基準を決める。登録する組は、たとえば次のように用意する。
質問:[営業時間を教えてください]
答え:[受付時間は平日の9時から17時です。]
質問:[パスワードを忘れました]
答え:[ログイン画面の「パスワードを忘れた方」から再設定できます。]ログから AI の答えを直して登録することも、まとめて取り込むこともできる。手順は Dify の使い方にある。
問い合わせを種類ごとに分ける
メールやフォームの問い合わせを、請求や不具合などの担当ごとに分けたいときの場面だ。Dify のパラメーター抽出のノード(Parameter Extractor)は自由に書かれた文を決まった形に直し、IF/ELSE のノードで結果を分けられる。ワークフローは Webhook(外部からの通知)をきっかけに自動で動かすこともできる。パラメーター抽出のノードには次のように書く。
問い合わせの文から、種類を1つ選んで出力して。
種類:[請求]、[配送]、[不具合]、[その他]
例:「先月の請求額が高い」→ 請求
例:「荷物が届かない」→ 配送
どれにも当てはまらないときは「その他」にする。読み取れないときに返す文を決めておくと、次のノードで分岐に使える。手順は Dify の使い方にある。
海外のお客様への返信を訳す
英語で届いた問い合わせを読み、返信を英語で送るときの場面だ。DeepL は入力した文章を選んだ言語に訳し、訳文の単語を押すと別の訳し方を選べる。訳文の言語を英語にして、日本語で書いた返信を次のように入力する。
[お客様の名前]様
お問い合わせいただき、ありがとうございます。
[製品名]の[症状]について、次の手順をお試しください。
[手順]
解決しない場合は、このメールにご返信ください。訳した英文は DeepL Write に貼り、「スタイル」メニューで「ビジネス」を選んで整えられる。文体とトーンの指定は、日本語、中国語、韓国語では使えない。製品名の訳がそろわないときは、「用語集」に登録しておく。用語集に登録した訳語は、訳文の文法に合わせて調整される。手順は DeepL の使い方にある。
問い合わせの記録から多い問題を集計する
1か月分の問い合わせの記録から、多い問題とその推移をつかみたいときの場面だ。ChatGPT はスプレッドシートや CSV のデータを集計し、表やグラフにできる。問い合わせ管理の仕組みから書き出した CSV を添付して、次のように頼む。
添付した[ファイル名]は[期間]の問い合わせの記録です。
[問い合わせ内容]の列を読み、内容を[5]つほどの種類に分けて、種類ごとの件数を表にしてください。
次に、件数の多い3つの種類について、週ごとの推移を折れ線グラフにしてください。
種類の分け方と、どの種類にも入らなかった件数も書いてください。ヘルプは使ってほしい列、計算、まとめ方、グラフの種類を指定するよう勧めている。1行目に分かりやすい列見出しを置き、1件を1行にした表のほうが分析しやすい。TRAIL はお客様の名前やメールアドレスの列を消してから添付することを勧める。手順は ChatGPT の使い方にある。
社内の情報を入れる前に
問い合わせの文には、お客様の名前、連絡先、注文の番号が入っていることが多い。AI に入れる前に、入力が学習に使われるか、止める設定、会社向けプランとの違いを、各社の公式の説明で確かめておく。
ChatGPT
OpenAI のヘルプによると、個人向けのアカウントでは、設定によって会話がモデルの改善に使われる場合がある。止めるときは「設定」→「データコントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする。オフにしても、回答に「いいね」や「よくないね」を付けると、その会話全体が学習に使われることがある。Business、Enterprise、Edu のワークスペースの内容は、初期設定では学習に使われない。
Claude
Anthropic のヘルプによると、Free、Pro、Max では、学習に会話を使うかを利用者が設定で選ぶ。止めるときは「設定」→「プライバシー」で「AIモデルの改善を支援する」をオフにする。ヘルプは、クレジットカードの番号、健康の記録、パスワード、機密の業務文書を入力するときは慎重に考えるよう求めている。Team、Enterprise などの商用の製品では、初期設定で入力と出力を学習に使わない。
NotebookLM
Google のヘルプによると、NotebookLM の個人のアカウントではフィードバックを送らない限り、ノートブックの内容が Google の基盤モデルの学習に直接使われることはない。高評価や低評価のフィードバックを送ると、プロンプト、ソース、出力などが集められ、訓練を受けたチームが確認する。Google Workspace のアカウントでは、フィードバックを送った場合でも、人による確認にも学習にも使われない。
Dify
Dify を提供する LangGenius のプライバシーポリシーは、自社で AI のモデルを訓練せず、AI とのやり取りのデータをモデルの学習に使わないとしている。LangGenius が選んで管理するモデルを使う場合、データは委託先のモデルの提供元が処理し、提供元は学習や自社の目的に使うことを禁じられている。自分でモデルの提供元を選んで API キーを入れる場合、データはその提供元に直接送られ、学習に使われるかは提供元との契約で決まる。利用規約では、Dify はサービスの提供、保守、改善などに必要な範囲で、送られたコンテンツを使う許可を受ける。
DeepL
DeepL のプライバシーポリシーによると、無料の DeepL翻訳と DeepL Write に入れた文章とその訳文は、ニューラルネットワークと翻訳アルゴリズムの訓練と性能の向上のために一定期間保存される。無料版で個人データを含む文章を訳したり推敲したりすることは利用規約で認められておらず、DeepL Pro に登録している場合に限って可能だ。料金ページは DeepL Pro のお客様のデータを DeepL の AI モデルの訓練に使わないとしている。Individual と Team の翻訳プランには、データの保護を含む DeepL Write Pro は含まれず、Business には含まれる。
どのツールも、会社向けや有料のプランを使っているかどうかでデータの扱いが変わる。個人のアカウントでお客様の情報を扱う前に、社内で決められたプランとアカウントを使っているかを確かめる。
気をつけること
回答が間違っていることがある
AI はもっともらしいが事実と違う内容を出すことがある。これをハルシネーションという。OpenAI のヘルプは、ChatGPT が誤った情報や存在しない出典を出すことがあり、回答を最終的な情報源にせず初稿として使うよう勧めている。Anthropic の利用規約も、出力は正確とは限らず、正確さを自分で確かめずに頼ってはいけないとしている。Google のヘルプは、NotebookLM が不正確な情報を示すことがあるとしている。
Dify の利用規約は出力の中の事実を自分で確かめずに頼らないよう求めている。公開の解説によると、公開すると利用者が使っているアプリがすぐに今の設定に置き換わる。チャットボットを直したら、テスト実行で答えを確かめてから公開する。DeepL Pro の利用規約は API の項で処理済みコンテンツの正確さを保証しないと定めている。AI が作った返信は、担当者が読んで直してから送る。
個人情報や顧客の情報の扱い
お客様の名前、連絡先、注文の番号のような個人に関わる情報は、入れる前に社内のルールを確かめる。ChatGPT の一時チャットは履歴に残らず、モデルの改善にも使われないが、安全上の目的でコピーが最長30日間保持される場合がある。Claude のシークレットチャットも、設定で学習への利用を許していても Claude の改善に使われない。
Dify で作ったチャットボットを公開するときは、ログの扱いにも気をつける。Dify のログには利用者との会話がすべて残り、個人情報が含まれる場合がある。ログの解説は必要に応じてプライバシーポリシーを示し、利用者の同意を得るよう求めている。Web アプリは初めは公開の状態で、リンクを知っている人なら誰でも使えるので、リンクは届けたい相手にだけ渡す。
OpenAI の利用規約は信用、雇用、医療のような、個人に重大な影響を与える判断に、その人に関する出力を使ってはいけないとしている。
社内ルールの確認
会社向けのプランでは、管理者が使える機能を決める。ChatGPT の Business と Enterprise では、管理者がメンバーの使えるモデルやアプリの利用を決められる。Claude の Team と Enterprise では、Gmail などのコネクタを、組織のオーナーが有効にしてからメンバーが使える。NotebookLM を会社のアカウントで使うには、組織の管理者がアクセスを有効にしている必要がある。Dify では、アプリを作れるのは Editor 以上の役割で、Normal は公開されたアプリを使うだけだ。AI を使ってよい業務、入れてよい情報の範囲は、会社の情報システムの担当や規程で確かめる。この記事は、AI の利用が法令や契約に合うかの判断をしない。
よくある質問
問い合わせへの返信を AI に任せてもよいですか
送る前に、担当者が読んで直す。OpenAI のヘルプは回答を初稿として使うよう勧め、Dify の利用規約は出力の中の事実を確かめずに頼らないよう求めている。Claude の Gmail のコネクタも、初期設定ではメールを送る前に利用者の承認を求める。
お客様の名前やメールアドレスを入れてもよいですか
社内のルールで認められ、会社向けや有料のプランを使っている場合に限って考える。無料の DeepL では、個人データを含む文章を訳すことは利用規約で認められていない。ChatGPT や Claude の個人のアカウントでは、設定によって会話が学習に使われる場合がある。TRAIL は要らない個人情報を消してから入れることを勧める。
お客様向けのチャットボットを作れますか
Dify なら、自社の資料を取り込んだチャットボットを作り、Web アプリや Webサイトへの埋め込みとして公開できる。無料の Sandbox では、メッセージクレジットは1回だけの200で、アプリは5個までだ。ログには会話がすべて残るので、プライバシーポリシーと同意の扱いを先に決める。
NotebookLM と Dify はどう使い分けますか
担当者がマニュアルに質問して返信を書くなら、資料だけを根拠に引用付きで答える NotebookLM が合う。お客様や社内の人が使う窓口として公開するなら、Web アプリや Webサイトへの埋め込みの形で使える Dify が合う。
英語の問い合わせにも対応できますか
DeepL で問い合わせを日本語に訳し、日本語で書いた返信を英語に訳せる。製品名の訳は用語集でそろえる。社外に出す前には、原文を読める人が訳文を確かめる。
次に読む
TRAIL の年表(重要度2以上)から作成。2026.10.07 まで。
出典
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- ChatGPT 無料版に関するよくある質問OpenAI
- ChatGPT によるデータ分析OpenAI
- ChatGPT のプロジェクトOpenAI
- ChatGPT 向けプロンプトエンジニアリングのベストプラクティスOpenAI
- ChatGPT のデータ管理OpenAI
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