ソブリンAIとは?意味・仕組みと国産AIツール6つ・年表(2026年11月時点)
ソブリンAI
Sovereign AI
ソブリンAIとは、国が自国の計算設備、データ、人材、企業のつながりを使って、AIを自ら生み出せる能力のこと。NVIDIA の解説がこの意味で定義している。
要するに
- NVIDIA は物理インフラとデータインフラの2つの面があると説明している
- Sakana AI は自国の文化や価値観に基づくAIと呼び、事後学習を鍵とする
- 日本の会社のモデルでも、データを国内で処理するかはツールごとに違う
最終確認

日本の会社のAIツール
日本の会社のモデル開発の出来事
目次8
ひとことで言うと
ソブリンAI(Sovereign AI)は、国が自分の国の計算設備、データ、人材、企業の力で AI を生み出せる能力を指す言葉だ。NVIDIA は2024年5月10日の日本語の解説記事で、ソブリンAIを「国が自国のインフラ、データ、労働力、ビジネス ネットワークを用いて人工知能を生み出すことができる能力」と定義している。
日本の例では、東京の Sakana AI が2025年11月17日のシリーズBの発表で、各国が求める、自国の文化や価値観に基づいた AI を「ソブリンAI」と呼んだ。同社は日本の文化的背景や社会規範に合わせたモデルの研究開発に着手したとしている。
仕組み
NVIDIA の解説では、ソブリンAIには2つの面がある。
- 物理インフラ:AI を学習させて動かす計算設備だ。NVIDIA は、データが入って知能が出てくる次世代のデータセンターを「AI ファクトリー」と呼ぶ。国有の通信事業者や公益事業会社と組んでソブリン AI クラウドを調達・運用する国もある。
- データインフラ:ここにソブリン基盤モデルが入る。例として NVIDIA は、現地のチームが開発し、現地のデータで学習させた大規模言語モデル(LLM)を挙げ、方言、文化、慣習への対応を強められるとしている。
この2つとは別に、NVIDIA は2019年から AI Nation イニシアティブで、エコシステムづくりや人材育成を含むソブリン AI 能力の構築を各国で支援してきたとしている。
NVIDIA は2026年7月6日の英語のブログでも、国の AI 戦略の要素を5つ挙げた。AI の必要性、AI を使える人材、モデルとデータ、エコシステム、AI ファクトリーだ。このうちモデルとデータは、その国のデータで学習・調整し、その国の設備で動かし、その国の法律だけに従うものとしている。この記事は「ソブリンAI」という語は使っていない。
モデルの作り方には、大きく2つの道がある。1つは、他社のモデルをもとにせず一から学習させる道(フルスクラッチ)だ。もう1つは、海外で公開された高性能なモデルに、日本向けの追加の学習を施す道だ。Sakana AI はシリーズBの発表で、AI 開発の主戦場が「事前学習」から「事後学習」に移っているとし、事後学習を「ソブリンAIの鍵」と位置づけた。事後学習は学習済みのモデルを目的に合わせて調整する工程を指す。
表で見る最新の状況
上の表は、TRAIL の DB で運営会社の国が日本のツール6つだ。料金の確認日は Notta が2026年10月24日、Sakana AI と Felo が10月26日、PLaMo、tsuzumi、Rimo(旧 Rimo Voice)が11月1日。無料プランがあるのは Sakana AI、PLaMo、Notta、Felo の4つで、tsuzumi と Rimo にはない。tsuzumi には公開の料金表がなく、料金は要問い合わせだ。
年表は日本の会社のモデルの開発と、GENIAC への採択やシリーズBの調達を含む出来事13件を古い順に並べた。確認日は2026年10月10日から11月1日。
- 最初は2023年9月28日の「PLaMo-13B をオープンソースで公開」だ。Preferred Networks(PFN)は130億パラメータの日英2言語のモデルを Apache License 2.0 で公開した。
- NTT は2023年11月1日に tsuzumi を発表し、2025年10月20日に tsuzumi 2 の提供を始めた。
- PFN の PLaMo 2.0 Prime(2025年5月22日)は、経済産業省の GENIAC 第2期で開発したモデルをもとにしている。最新の PLaMo 3.1 Prime は2026年10月27日に出た。
- Sakana AI は2026年3月24日に Namazu のアルファ版を、8月3日に Sakana Namazu API を出した。Namazu API は Moonshot AI のオープンモデル Kimi K2.6 に日本語と業務の文脈の追加学習を施したものだ。
TRAIL の年表では、一から作るモデルの更新は PLaMo と tsuzumi に、海外のオープンモデルを日本向けに調整する取り組みは Sakana AI に並ぶ。同じ日本の会社のモデルでも、作り方が違う。
ソブリンAIと国産AIの違い
NVIDIA の定義でのソブリンAIは、国が AI を生み出す能力を指す。これに対し、PFN と NTT は自社のモデルを「国産」「純国産」と呼んでいる。PFN は PLaMo を「国産生成AI基盤モデル」「純国産の基盤モデル」、NTT は tsuzumi 2 を「純国産LLM」と書く。どちらの会社も読んだページでは「ソブリンAI」という語を使っていない。
| 一から作るモデル | 海外のオープンモデルを調整するモデル | 海外の会社の LLM を使う国内のサービス | |
|---|---|---|---|
| 例 | PLaMo、tsuzumi | Sakana Namazu | Rimo |
| もとにしたモデル | なし。PFN と NTT がゼロから学習させた | Moonshot AI の Kimi K2.6 | OpenAI や Anthropic などの LLM |
| 提供元の説明 | 他社モデルをもとにせず、社外ライセンスの縛りがない(PFN)。日本の国内法に準じて開発した(NTT) | 日本語と日本の業務の文脈に合わせ、特定の話題での応答回避や出力の偏りを抑えた | 顧客データは国内のデータセンターに保管し、すべてのプランで AI の学習に使わない |
仕事でどう関係するか
機密の文書を社外に出したくないとき
NTT は tsuzumi 2 を、1GPU で動く軽量なモデルで、自社のサーバー(オンプレミス)やプライベートクラウドで機密性の高い情報も安全に扱えると説明している。PFN によると、PLaMo 3.1 Prime の Deep Research(調べものを自動で進めてレポートにする機能)はオンプレミスでも使え、閉じた環境の中で社内文書だけを調べることもできる。
データをどこで処理するかを確かめたいとき
日本の会社のモデルでも、データを国内で処理するとは限らない。日本語特化をうたう Sakana Namazu のよくある質問は、データの処理を日本国内で完結させることは現時点で保証していないとしている。TRAIL の DB では、PLaMo API は推論と会話の履歴を国内のリージョンで扱い、Web検索のときだけ検索の語と閲覧先の URL を国外の検索サービスに送る。Notta と Rimo はデータを日本国内に保管するとしている。
次の AI サービスについて、入力したデータを処理する場所、保存する場所、AI の学習に使うかどうかを、公式のページの URL つきで表にしてください。書かれていない項目は「記載なし」としてください。
(サービス名を3つ書く)行政や自治体で使うとき
PFN によると、PLaMo 2.0 Prime はデジタル庁が整備するガバメントAI「源内」で試用される国内の大規模言語モデルの1つに選ばれた。TRAIL の DB では、Rimo は2026年10月8日にデジタル庁のデジタルマーケットプレイスに掲載され、行政機関や地方公共団体が選んで調達できるようになった。
日本語や日本の慣習に合うかを見たいとき
Sakana AI は Namazu のアルファ版の発表で、海外製のモデルには開発元の地域のイデオロギーや情報統制の傾向が反映されるとし、そのバイアスを直す事後学習の手法を作ったと書いた。Sakana Namazu のページは、敬語や商習慣を踏まえた日本語で業務文書やメールを扱えるとしている。
注意点と限界
- ソブリンAIの説明は、使う会社によって幅がある。NVIDIA は国が AI を生み出す能力として、Sakana AI は自国の文化や価値観に基づく AI として説明している。NVIDIA の解説は各国の取り組みの例として、NVIDIA の GPU やスーパーコンピューターを使う事例を挙げている。
- 経済産業省の GENIAC のページは「ソブリンAI」という語を使っていない。GENIAC は、経済産業省と NEDO が主導し、国内の AI 開発力の強化と社会実装の加速を目指すプロジェクトだと説明している。
- 「国産」や「日本語特化」と書かれていても、もとにしたモデル、データの処理場所、学習への利用は別々に確かめる必要がある。日本語特化の LLM とされる Sakana Namazu は、もとのモデルが海外のオープンモデルで、データの国内処理を保証していない。
- PLaMo API のように、本体は国内で扱っても、Web検索などの一部の機能で国外のサービスにデータを送るものもある。
よくある質問
ソブリンAIと国産AIは同じか
同じではない。NVIDIA の定義では、ソブリンAIは国が自国のインフラ、データ、人材、企業の力で AI を生み出す能力を指す。「国産」は PFN や NTT が自社のモデルを説明するときに使う語で、PFN は PLaMo を「国内でフルスクラッチで開発する国産生成AI基盤モデル」と書いている。
ソブリンAIは海外のモデルを使わないということか
そうとは限らない。Sakana AI は海外で公開されたオープンウェイトの基盤モデルを使い、各国の文化・価値観や安全保障上の要件を満たすように事後学習する研究をしている。同社はこの事後学習を「ソブリンAIの鍵」と呼んでいる。
日本の政府はソブリンAIに取り組んでいるか
読んだ政府のページは「ソブリンAI」という語を使っていない。ただ、経済産業省と NEDO の GENIAC は、基盤モデルの開発に必要な GPU などの計算資源の調達、データセットの構築、知見の共有を支援している。第4期の領域特化モデル開発事業の採択事業者には、Sakana AI と PFN が並ぶ。
日本の会社の AI ツールには何があるか
TRAIL の DB では、運営会社の国が日本のツールは6つある。チャットと API の Sakana AI と PLaMo、企業向けの言語モデルの tsuzumi、会議の記録の Notta と Rimo、AI 検索の Felo だ。料金とデータの扱いの比較は「国産AIツールの選び方」にまとめた。
関連する用語
- LLM(大規模言語モデル):PLaMo と tsuzumi は国内で一から作られた LLM
- 基盤モデル:NVIDIA はソブリン基盤モデルをソブリンAIの要素に挙げる
- オープンウェイト:Sakana Namazu は公開されたモデルをもとにする
- ファインチューニング:学習済みのモデルを目的に合わせて追加学習する
- ローカルLLM:自社の環境でモデルを動かす使い方
- ツール:Sakana AI、PLaMo、tsuzumi、Notta、Rimo、Felo
- 使い方:PLaMo の使い方、Sakana AI の使い方
- 比較:国産AIツールの選び方
出典
- ソブリン AI とは?NVIDIA
- How Nations Are Deploying AI for Strategic PrioritiesNVIDIA
- Announcing Our Series BSakana AI
- 最大規模のオープン基盤モデルを各国仕様へ適応させる事後学習技術を開発Sakana AI
- Sakana AI、日本語特化のLLM API「Sakana Namazu」を提供開始Sakana AI
- Sakana Namazu — 日本の感性で、考え、動くLLMSakana AI
- GENIAC経済産業省
- 領域特化モデル開発事業者(第4期)のご紹介経済産業省
- PLaMoPreferred Networks
- 国産生成AI基盤モデルPLaMo 3.0 Primeを正式リリースPreferred Networks
- 国産生成AI基盤モデルPLaMo PrimeにWeb検索・Deep Research搭載Preferred Networks
- 更なる進化を遂げたNTT版LLM tsuzumi 2の提供開始NTT
- NTT版大規模言語モデル「tsuzumi 2」NTT
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)
