電子透かしとコンテンツ来歴とは?C2PA・SynthIDと対応ツール(2026年11月時点)
コンテンツ来歴(こんてんつらいれき)
電子透かし / Content Credentials / コンテンツクレデンシャル / C2PA / SynthID / AI透かし
電子透かしとコンテンツ来歴とは、画像や音声、文章がAIで作られたか、いつ何で作られどう変えられたかを、中身に埋めた印やファイルに添えた署名付きの記録で確かめる仕組みのこと。
要するに
- SynthIDは中身に見えない透かしを埋め、C2PAは作られた経緯を署名付きで添える
- 透かしは一部の加工に耐え、来歴の記録はスクリーンショットなどで消えることがある
- 印が見つからなくても、AIで作っていないとは言えない
最終確認

生成物に電子透かしか来歴の情報が付くツール
AIの生成物の電子透かしや来歴の情報に関わる出来事
目次8
ひとことで言うと
電子透かしとコンテンツ来歴は、画像や動画、音声、文章が AI で作られたものか、いつ何で作られどう手を加えられたかを、あとから確かめられるようにする仕組みだ。代表的なものが2つある。Google DeepMind の「SynthID」は、AI が作った中身そのものに人には分からない電子透かし(目に見えない印)を埋め込む。団体 C2PA の規格「Content Credentials」は、作られた経緯の記録を電子署名付きでファイルに添える。
C2PA は Content Credentials を、食品の栄養成分表示のようなものだと説明している。誰でもいつでも、そのファイルの来歴をのぞける。
仕組み
コンテンツ来歴(C2PA の Content Credentials)
- 作るとき:カメラや編集ソフト、AI のツールが、どのツールで、いつ、どこで作り、どう変えたかの記録をファイルに付ける。C2PA はこの記録を C2PA Manifest とも呼ぶ。
- 署名:記録には電子署名と、ファイルと記録の両方のハッシュ(中身から計算する短い値)が入る。
- 確かめるとき:ファイルか記録が少しでも変わると、署名とハッシュの対応が崩れ、改ざんが分かる。
- 消されたとき:記録はファイルから外れることがある。C2PA は、目に見えない電子透かしなどを手がかりに、外れた記録を探し直す方法も用意している。
C2PA は Joint Development Foundation という非営利団体のプロジェクトで、Content Authenticity Initiative と、Project Origin の取り組みを合わせて作られた。規格は使用料なしで使える。
電子透かし(SynthID)
- 画像と動画:作った瞬間に目に見えない透かしを入れる。Google DeepMind は切り抜きやフィルター、圧縮のような加工にも耐えるよう設計したとしている。
- 音声:音楽を作るモデル Lyria や、NotebookLM のポッドキャストの機能で作った音声に、聞こえない透かしを入れる。
- 文章:AI は次に来る語を確率で選びながら文章を作る。SynthID はその確率を少しずつ調整して透かしにする。Google DeepMind によると、Gemini のアプリとウェブの文章に入っている。
- 判定:画像や動画、音声を Gemini や Google 検索、Chrome に渡し、Google の AI で作ったかを尋ねると、透かしの有無を調べて答える。
表で見る最新の状況
上の料金の表は、作った画像や動画に電子透かしか来歴の情報が付くと公式の説明にある4つのツールについて、TRAIL の DB の料金を並べたものだ。確認日は2026年10月14日から10月24日。4つとも無料プランが「あり」で、日本語の画面がある。
- ChatGPT のいちばん安い有料プランは Go の月¥1,400だ。OpenAI のヘルプによると、ChatGPT と Codex、API で作った画像には、Content Credentials と SynthID の両方が入る。ただし対象は製品やモデル、ファイルの形式などで変わり、API の gpt-image-1 のように近く提供を終えるモデルは対象外だ。
- Gemini、Nano Banana、Veo のいちばん安い有料プランは、どれも Google AI Plus の月725円だ。
上の年表は、TRAIL の DB から、AI の生成物の電子透かしや来歴の情報に関わる出来事10件を選び、古い順に並べたものだ。確認日は2026年10月10日から10月20日。
- 2023年3月21日、Adobe Firefly は「Adobe Firefly をベータ公開」した。このとき Content Credentials に「Do Not Train」の印を付ける構想も示した。
- 2024年5月14日の「Veo を発表」では、生成した動画に SynthID の透かしが入るとされた。8月28日には Gemini の画像生成 Imagen 3 にも入った。
- 2025年9月30日、OpenAI は Sora 2 と Sora アプリの安全対策を公表した。すべての出力に目に見える透かしと C2PA のメタデータ(ファイルに添える情報)が入るとした。TRAIL の DB では、Sora の Web 版とアプリは2026年4月26日に提供を終えている。
- 2025年11月20日、Gemini アプリで画像を渡して Google の AI で作られたかを尋ねられるようになった。Nano Banana Pro の画像には C2PA のメタデータも付く。2026年1月28日には「日本の Google フォトに Nano Banana」が入り、編集の履歴が C2PA で記録される。
- 2026年9月22日には GitHub Copilot で Claude Opus 5.5 が使えるようになった。GitHub によると、文章の出力には透かしが入るが、意味や品質、トークン(AI が文章を数える単位)の数、費用は変わらない。
TRAIL の年表の10件のうち、透かしが入ると書いた出来事は2024年の動画と画像が最初で、文章の出力に透かしが入ると書いたのは2026年9月の1件だ。
電子透かしとコンテンツ来歴の違い
| 電子透かし(SynthID など) | コンテンツ来歴(C2PA の Content Credentials) | |
|---|---|---|
| 何を付けるか | 中身そのものに埋め込む目に見えない印 | ファイルに添える、作られた経緯の記録 |
| 伝えられる情報 | 少ない。OpenAI は、透かしが運ぶ文脈は少ないとしている | 多い。どのツールでいつ作り、どう変えたか |
| 消えやすさ | 一部の加工に耐える。大きな切り抜き、圧縮、大幅な言い換え、翻訳で見つからなくなることがある | スクリーンショットやファイルの変換のような日常の操作で失われることがある |
| 確かめ方 | 透かしを入れた会社などの判定の道具(SynthID Detector など) | 署名とハッシュを確かめる |
OpenAI は、技術的にできる場合は両方を組み合わせ、互いの弱点を補うとしている。
仕事でどう関係するか
社外に出す画像を AI で作るとき
AI で作った画像には、ツールによって透かしや来歴の情報が入っている。OpenAI によると、これらの印には利用者や組織、プロンプトの情報は入らない。C2PA も、規格の中心部分は個人の特定を避けるため、作った人や組織を記録する仕組みを持たないとしている。
届いた画像や音声が AI で作られたか確かめたいとき
OpenAI は openai.com/verify で、画像と音声に OpenAI の印があるかを調べられるようにしている。Google DeepMind の SynthID Detector では、画像や動画、音声が、Google と、OpenAI、NVIDIA、Kakao などの提携先の AI で作ったかを調べられる。
印が見つからなくても、AI で作っていないとは言えない。OpenAI は、印が付く前に作られた場合や、加工で印が消えた場合を挙げている。Claude に尋ねる方法も頼りにならない。Anthropic は、Claude は画像が AI で作られたかを判定できず、尋ねても誤ることがあると書いている。
この画像を Google の AI で作成または編集したかどうか、SynthID の透かしの有無で確かめてください。
透かしが見つからない場合は、その結果から言えることと言えないことを分けて書いてください。AI に書かせた文章を社外に出すとき
文章にも透かしが入ることがある。OpenAI によると、EU では ChatGPT が作った文章に、EU の AI 法に合わせて textGrain という透かしが入る。API の利用者は地域を問わずプロジェクトや組織の設定で有効にできる。
注意点と限界
- 印は事実の保証ではない。OpenAI は、印が見つかっても、内容が正確か、手を加えていないか、正しい文脈で示されているかは確かめられないとしている。作った人や理由も分からない。
- 透かしは作者や権利を決めるものではない。OpenAI は、透かしは OpenAI のモデルが作ったか処理した可能性を示すだけだと書いている。
- 判定は確率にもとづく。Google の開発者向けの説明では、SynthID の文章の判定は「透かしあり」「なし」「不明」の3つで返る。事実を答える文章では透かしが効きにくく、大きく書き直したり翻訳したりすると判定の確かさが大きく下がる。
- OpenAI の判定の道具は、ほかの会社の AI のモデルで作った内容を見分けるためのものではない。
よくある質問
C2PA とは何か
Coalition for Content Provenance and Authenticity の略で、デジタルの内容の出どころと編集の履歴を確かめる規格を作る団体だ。その規格を Content Credentials と呼ぶ。規格は使用料なしで使える。
SynthID とは何か
Google DeepMind が作った、AI の生成物に目に見えない透かしを入れて見分ける技術だ。画像、音声、文章、動画に入れられる。文章用の SynthID Text は公開されていて、開発者が自分のモデルに組み込める。
透かしは消せるか
消える場合がある。OpenAI は、大きな切り抜き、圧縮、言い換え、翻訳で透かしが見つからなくなることがあるとしている。C2PA の記録もスクリーンショットやファイルの変換で失われることがある。
Content Credentials は DRM(コピー防止)か
違う。C2PA は、DRM が使い方を制限するのに対し、Content Credentials は来歴を記録して透明にするもので、使い方は制限しないと説明している。
対話 AI に「この画像は AI で作ったか」と聞けば分かるか
Claude では分からない。Anthropic は、Claude には画像が AI で作られたかを判定できないと書いている。Gemini は Google の AI で作ったかどうかを、SynthID の透かしで調べて答える。
関連する用語
- 画像生成AI:文章の指示から画像を作る AI
- 動画生成AI:文章や画像から動画を作る AI
- 音声生成AI:文章から声や音を作る AI
- 合成データ:AI などで人工的に作ったデータ
- 生成AI:文章や画像を新しく作る AI の総称
- ツール:ChatGPT、Gemini、Nano Banana、Veo、Adobe Firefly
出典
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)