推論モデルとは?意味・仕組みと登場の年表(2026年10月時点)
推論モデル(すいろんもでる)
Reasoning model / 思考モデル
推論モデルとは、回答を返す前に推論トークンを使って内部で段階的に考え、複雑な問題を解くように作られたAIモデルのこと。考える量は設定で調整できる。
要するに
- 答える前に推論トークンで考え、コーディングや数学のような複雑な作業に向く
- 推論トークンは画面に出ないが、出力トークンとして課金される
- 考える量を下げると速く、使うトークンが少なくなる
最終確認

推論モデルの登場
Grok・モデル
Grok 4 を公開
原論文と関連研究
- DeepSeek-R1の原論文を読む 推論は強化学習でどう伸びたかDeepSeek-R1: Incentivizing Reasoning Capability in LLMs via Reinforcement Learning
- Chain of Thoughtの原論文を読む 途中の手順を例示するChain of Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models
- s1 論文の解説:推論時間を延ばすtest-time scalingと正答の変化s1: Simple test-time scaling
- STaR 論文の解説:自分で作った推論例を学習に使うSTaR: Bootstrapping Reasoning With Reasoning
- Test-Time Scaling 論文の解説:推論に計算を足す評価で「選び方」まで測るTest-Time Scaling in Reasoning LLMs: Inference Regimes, Evaluation, and Reproducibility
目次8
ひとことで言うと
推論モデルは答えを書く前に、内部で段階を追って考えてから回答するAIモデルだ。考える分だけ時間とトークン(AI が文章を数える単位)を使うが、コーディングや高度な数学のような複雑な作業で高い効果を出しやすい。
身近な例でいえば、暗算ですぐ答える人と、メモ用紙に途中の式を書いてから答える人の違いに近い。推論モデルは後者のやり方を、利用者に見えないところで行う。
仕組み
OpenAI、Anthropic、Google の公式ドキュメントに書かれている流れをまとめると、次のようになる。
- 質問を受け取ると、モデルは回答の前に「推論トークン」(考えるために使うトークン)を生成する。OpenAI のドキュメントは、モデルがこれで問題を分解し、複数のやり方を検討すると説明している。
- 考える量は設定で変えられる。OpenAI は
reasoning.effort、Google はthinking_level、Anthropic の手動モードはbudget_tokensという設定を用意している。Gemini は既定で、質問の難しさに合わせて考える量を自動で調整する。 - 考えた中身そのものは、そのままは返さない。OpenAI は o1 の発表で、生の思考の連鎖(考えの途中経過)を利用者に見せず、要約を示すと説明した。Gemini(要約を有効にする設定を使った場合)と Claude も要約を返す。
- 推論トークンは画面に出なくてもコンテキストウィンドウ(1回のやり取りで扱えるトークンの上限)を使い、出力トークンとして課金される。
OpenAI は2024年9月12日の o1 の発表で、強化学習(試行と評価を繰り返して学ばせる方法)の量と、答える前に考える時間が長いほど性能が上がったと述べている。
表で見る最新の状況
上の年表は TRAIL の年表のうち、題名か要約に「推論モデル」とある「モデル」の出来事を古い順に並べたものだ。2026年10月20日までに確認した11件が並ぶ。
- 最初は、2024年9月12日の OpenAI o1-preview の公開だ。「回答の前により長く考える推論モデルの第1弾」として o1-preview と o1-mini が出た。
- 2024年11月20日に DeepSeek が R1-Lite-Preview を公開した。2025年1月20日の DeepSeek-R1 は MIT ライセンスのオープンソースで、小型の蒸留モデル6種も出た。
- 2025年2月には xAI の Grok 3 Beta(19日)と Anthropic の Claude 3.7 Sonnet(24日)が続いた。Claude 3.7 Sonnet は「ハイブリッド推論モデル」とされ、思考過程を見せる拡張思考を備えた。
- 2025年8月7日には、Microsoft 365 Copilot が GPT-5 を導入し、通常の質問は高速なモデル、複雑な質問は推論モデルにルーターが割り当てるようになった。
2026年9月21日には、GitHub Copilot が xAI の推論モデル Grok 4.7 を Copilot Pro、Pro+、Max、Business、Enterprise で順次使えるようにした。TRAIL の年表では、11件が ChatGPT、DeepSeek、Grok、Claude、Microsoft Copilot、Muse、GitHub Copilot のツールに分かれる。推論モデルは開発元のチャットだけでなく、ほかの会社のツールの中でも選べるようになっている。
推論モデルと思考なしのモデルの違い
OpenAI のドキュメントは考える量を none(考えない)から max まで段階で示している。両端を比べると次のとおりだ。
| 項目 | 推論モデル(考える量を多くする) | 思考なし(none) |
|---|---|---|
| 回答までの流れ | 推論トークンで考えてから答える | すぐに答える |
| 向く作業(OpenAI の例) | 難しい推論、複雑なデバッグ、長い調査、エージェントの作業 | 音声、すばやい情報の検索、分類 |
| 速さ | 考える分だけ遅くなる | 遅れが小さい |
| トークン | 推論トークンも出力として課金される | 使うトークンが少ない |
| 途中の考え | 要約が返る場合がある | なし |
仕事でどう関係するか
難しい分析やコードの見直しを頼むとき
OpenAI は考える量の high の用途に、難しい推論、複雑なデバッグ、深い計画を挙げている。表計算の集計の誤りを探す、移行計画の落とし穴を洗い出す、といった作業では、推論モデルや考える量の多い設定を選ぶと判断できる。
次の移行計画を読み、失敗しそうな手順を3つ挙げてください。
それぞれ、起きたときの影響と、事前に確かめる方法も書いてください。速さが大事な作業に使うとき
問い合わせの分類や、短い質問への即答では、考える量を下げるほうが速く安い。OpenAI は none の用途に音声、すばやい情報の検索、分類を挙げている。毎日大量に流す処理ほど、考える量の設定が費用と待ち時間に効く。
API の費用を見積もるとき
推論トークンは画面に出ないが、出力トークンとして課金される。OpenAI によると、推論トークンは問題によって数百から数万に及ぶ。出力の単価に、見えている回答の長さだけを掛けると、見積もりが実際より小さくなる。
社内で使うツールを選ぶとき
TRAIL の年表では、ChatGPT は2026年8月6日に Plus と Pro へ思考量を選べるスライダーを加えた。GitHub Copilot や Microsoft 365 Copilot のように、開発元以外のツールで推論モデルを使える例もある。社内で使うツールでどのモデルと思考の設定を選べるかが、導入前に確かめる点になる。
注意点と限界
- すべての作業で良くなるわけではない。OpenAI は o1-preview の評価で、いくつかの自然言語の作業では o1-preview が好まれず、すべての用途に向くわけではないと書いている。
- 考えた中身は全部は見えない。返るのは要約か、暗号化された状態だ。
- 上限に達すると、答えが空のまま課金されることがある。OpenAI と Google のドキュメントは、出力の上限に達すると回答が途中で止まり、それまでの推論トークンは課金されると説明している。OpenAI は試し始めには推論と出力に少なくとも25,000トークンを空けておくよう勧めている。
- 設定の名前と選べる値はモデルごとに違う。Anthropic は Claude 4.7 以降で
budget_tokensによる手動の拡張思考を受け付けず、適応型の思考(adaptive thinking)を使うよう案内している。
よくある質問
推論モデルと普通のモデルは何が違うのか
推論モデルは答える前に推論トークンを使って考える。普通のモデル、または考える量を none にした設定は、すぐに答える。前者は難しい問題に向き、後者は速く、使うトークンが少ない。
推論モデルの最初はどれか
TRAIL の年表で最も古いのは2024年9月12日の OpenAI o1-preview と o1-mini の公開だ。OpenAI はこれを「推論モデルの第1弾」としている。
無料で使えるか
ツールとプランによる。TRAIL の年表では、2024年9月の o1-preview は ChatGPT Plus と Team で使えた。今のプランで使えるかは各ツールの料金ページで確かめる必要がある。
考えている中身は読めるか
そのままは読めない。OpenAI は生の思考の連鎖を見せず要約を示すと説明しており、Gemini も要約を返す設定を持つ。要約は推論をまとめたもので、推論そのものではない。
API の料金はどう計算されるか
推論トークンは出力トークンとして課金される。入力と、画面に出る回答に加えて、推論の分も出力の単価で払う。使った推論トークンの数は、レスポンスの使用量の欄で確かめられる。
関連する用語
出典
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)
