教師あり学習とは?意味・仕組みとラベルの扱いで見る論文6本(2026年11月時点)
教師あり学習(きょうしありがくしゅう)
Supervised Learning / 教師あり機械学習
教師あり学習とは、特徴量と正解のラベルを組にした例からモデルを学ばせ、新しいデータのラベルを予測できるようにする機械学習の方式のこと。
要するに
- 数値を予測する回帰と、迷惑メールの判定のようにカテゴリを予測する分類が代表的だ
- LLM は大量の文章で事前学習したあと、手本の回答で教師ありの調整をする例がある
- 人が付けるラベルは費用がかかり、誤りも入るので、複数人で確かめる必要がある場合がある
最終確認

ラベルの用意の仕方で見る論文6本
- 初代GPT 論文の解説:生成的事前学習から用途別調整への転移Improving Language Understanding by Generative Pre-Training
- BERTは「両側の文脈」をどう学んだか 2018年の原論文を読むBERT: Pre-training of Deep Bidirectional Transformers for Language Understanding
- FixMatch 論文の解説:高確信の仮ラベルを強い画像変換にも通すFixMatch: Simplifying Semi-Supervised Learning with Consistency and Confidence
- CLIPは画像と文章をどう結びつけたか 2021年の原論文を読むLearning Transferable Visual Models From Natural Language Supervision
- InstructGPTの原論文を読む 人の評価で応答はどう変わったかTraining language models to follow instructions with human feedback
- Whisperの原論文を読む 大量の音声で認識の頑健さを測るRobust Speech Recognition via Large-Scale Weak Supervision
目次8
ひとことで言うと
教師あり学習(Supervised Learning)は、問題と正解を組にしたデータでモデル(予測をするためのソフトウェア)を学ばせ、新しいデータの答えを予測させる機械学習の方式だ。Google の機械学習の入門講座は、質問と回答の両方を含む過去の試験で勉強して、新しい試験に備える生徒にたとえている。人が正しい結果を含むデータを与えるので「教師あり」と呼ぶ。
身近な例は迷惑メールの判定だ。過去のメールに「迷惑メール」か「迷惑メールではない」かの正解を付けて学ばせると、新しいメールがどちらに当たるかを予測できる。
仕組み
Google の入門講座は教師あり学習をデータ、モデル、トレーニング、評価、推論の5つの考え方で説明している。
- データを用意する。1件ごとの例は特徴量とラベルでできている。特徴量はモデルが予測に使う値で、ラベルは「解答」に当たる、予測させたい値だ。雨の量を予測するなら、緯度、気温、湿度、気圧などが特徴量で、雨の量がラベルになる。両方がそろった例を「ラベル付きの例」と呼ぶ。
- トレーニング(学習)する。ラベル付きの例をモデルに与えると、モデルは予測した値とラベルの値を比べる。その差(損失)をもとに、モデルは解を少しずつ更新する。講座の例では、雨を1.15インチと予測して実際が0.75インチだったとき、予測が0.75インチに近づくように解を変える。
- 評価する。ラベル付きのデータの特徴量だけをモデルに渡し、出てきた予測をラベルの値と比べる。
- 推論する。評価の結果に納得したら、ラベルのない新しい例で予測させる。
教師あり学習の代表的な使い方は回帰と分類の2つだ。
回帰は数値を予測する。将来の住宅の価格や、目的地に着くまでの時間がその例だ。分類は、あるものがカテゴリに属するかどうかを予測する。2つの値のどちらかを出すもの(雨が降るか降らないか)を二値分類(バイナリ分類)、もっと多くの値から出すもの(雨、ひょう、雪、みぞれのどれか)を多クラス分類と呼ぶ。
学ばせる方法(アルゴリズム)にはいくつもの種類がある。Python の機械学習ライブラリ scikit-learn のユーザーガイド(1.9.1)は、教師あり学習の章に、線形モデル、サポートベクターマシン、最近傍法、決定木、勾配ブースティングやランダムフォレストなどのアンサンブル、ニューラルネットワークを並べている。
表で見る最新の状況
上の「ラベルの用意の仕方で見る論文6本」は、TRAIL の研究記事から、正解のラベルをどう用意するかに関わる論文を6本選び、古い順に並べたものだ。論文の内容は2026年11月6日に arXiv の論文のページと OpenAI の発表で確かめた。
初代 GPT(2018年6月)では、OpenAI は2段階の方法をとった。まず大量のデータで、言語モデリングを学習の信号にして教師なしの方法で学ばせる。次に、ずっと小さい教師ありのデータセットでファインチューニングする。
BERT(2018年10月)は、ラベルのない文章で事前学習し、出力の層を1つ足してファインチューニングするだけで、11の自然言語処理の課題で当時の最高の結果を出した。
FixMatch(2020年1月)は半教師あり学習の方法だ。ラベルのない画像を軽く加工してモデルに予測させ、自信の高い予測だけを仮のラベル(疑似ラベル)として残す。そのうえで、同じ画像を強く加工したものからその疑似ラベルを当てるように学ばせる。CIFAR-10 という画像のデータで、ラベル250件で正解率94.93%、40件(1クラスあたり4件)で88.61%だった。
CLIP(2021年2月)は、インターネットから集めた4億組の画像と文章で、どの説明文がどの画像に合うかを当てる事前学習をした。ImageNet では、その課題のための学習をしない設定(ゼロショット)で、元の ResNet-50 が学んだ128万件の学習用の例を1件も使わずに、ResNet-50 と同じ正解率に達した。
InstructGPT(2022年3月)では、ラベル付けの担当者が書いた手本の回答で、GPT-3 を教師あり学習でファインチューニングした。この教師ありファインチューニング(SFT)のデータは約1万3,000件の学習用のプロンプトからなる。手本と比較のデータを作り、主な評価をするために、約40人の外部の作業者を雇った。
Whisper(2022年12月)は、インターネット上の音声の書き起こしを予測するように学ばせた音声処理のモデルだ。学習のデータは多言語・多タスクの68万時間分で、論文は題名でこれを「大規模な弱い教師あり」と呼んでいる。ファインチューニングをしないゼロショットの設定でも、標準の評価用データでよく働いたと報告している。
6本はどれも、人が1件ずつ付けたラベルを大量に用意して一から学ばせる方法をとっていない。GPT と BERT はラベルのない文章で学んでから、ラベル付きのデータでファインチューニングした。FixMatch はラベルのない画像を合わせて使い、ラベルが40件の条件でも結果を報告した。CLIP と Whisper はネット上にある説明文や書き起こしを学習の信号に使った。InstructGPT は事前学習済みの GPT-3 を、約1万3,000件の学習用のプロンプトからなる SFT のデータで調整した。
教師あり学習とほかの学び方の違い
| 教師あり学習 | 教師なし学習 | 強化学習 | 自己教師あり学習 | 半教師あり学習 | |
|---|---|---|---|---|---|
| Google の説明 | 特徴とそれに対応するラベルからモデルを学ばせる | データの中のパターンを見つけるように学ばせる | 環境の中での行動に応じて報酬か罰を受け取る | ラベルのない例から代わりのラベルを作り、教師なしの問題を教師ありの問題に変える | 一部の例にだけラベルが付いたデータで学ばせる |
| 学ぶ材料 | 正解のラベル付きの例 | ふつうはラベルのない例 | 行動に対する報酬 | ラベルのない例とそこから作ったラベル | 少しのラベル付きの例と多くのラベルのない例 |
| 例 | 迷惑メールの判定、雨の量の予測 | 似たデータをまとめるクラスタリング | ロボットの移動、囲碁の AlphaGo | BERT | FixMatch |
強化学習との違いは強化学習のページでも比べている。
LLM(大規模言語モデル)の作り方にも、この区別が出てくる。Google の入門講座は、生成AIのモデルはまず教師なしの方法で学ばせ、そのあと特定の作業のデータで教師あり学習や強化学習を使って追加で学ばせることがあると説明している。Google の用語集は、自己教師あり学習を、BERT などの Transformer ベースのモデルの一部で使われている手法として挙げている。InstructGPT は、手本の回答による教師ありファインチューニング(SFT)のあとに、回答の順位を使うRLHF(人のフィードバックによる強化学習)で調整した。Google の用語集は、指示のプロンプトでモデルを学ばせて指示に従う力を上げる方法を「指示チューニング」と呼び、ファインチューニングの一種としている。
仕事でどう関係するか
予測に使うラベルを決めるとき
Google の講座は、予測したいものがそのままデータの列にある「直接ラベル」と、似ているが同じではない「プロキシラベル」(代わりのラベル)を分けている。自転車を持っている人を予測したいのに「自転車を持っているか」の列がなければ、「最近自転車を買ったか」のような列を代わりに使うかを考えることになる。講座は、直接ラベルが使えるならそちらを選び、プロキシラベルは予測したいものとの関係の強さで役に立つかが決まるとしている。
人にラベルを付けてもらうとき
Google の講座は、人が付けるラベルの短所として、報酬を払うので費用がかかることと、人は間違えるので同じデータを複数の人に見てもらう必要がある場合があることを挙げている。講座はたとえば自分でも1,000件にラベルを付け、ほかの評価者の結果と合うかを確かめるよう勧めている。基準を文章にするときは、次のように生成AIに下書きを頼める。
社内の問い合わせメールを「請求」「解約」「不具合」「その他」の4つに分けるラベル付けを、3人の担当者で行います。
人によって判断が分かれにくいように、各ラベルの定義、迷いやすい例、どれにも当てはまらないときの扱いを書いた基準の下書きを作ってください。ラベルが少ないとき
ラベルを集めるのに費用がかかり、ラベルのない例は多くある場合には、半教師あり学習が役立つと Google の用語集は書いている。scikit-learn のドキュメントも、ラベル付きの点がとても少なくラベルのない点が多いときに、半教師ありの手法がよく働くことがあるとしている。
AI の調整の説明で「SFT」を読むとき
InstructGPT の論文では、SFT は担当者が書いた手本の回答で GPT-3 を教師あり学習した段階を指す。手本による SFT と、回答の順位をもとにした RLHF は別の段階だった。どの段階でどんなデータを使ったかを分けて読むと、人が書いた手本に合わせた調整なのか、人の好みの順位に合わせた調整なのかを区別できる。
注意点と限界
ラベルそのものが間違っていることがある。Google の講座は、オークの木の画像をカエデとラベル付けするような誤りを、信頼できないデータの原因の1つに挙げている。人がラベルを付けたなら、担当者がどれくらいの頻度で間違えたかを確かめる。
特徴量がラベルの代わりになってしまう設計の欠陥を、Google の用語集は「ラベルの漏洩」と呼ぶ。例は、商品を買ったあとにしか担当者が付かないのに、担当者と話したかどうかを特徴量に入れたモデルだ。モデルはその特徴量とラベルの関係をすぐに学んでしまう。
データが多くても、範囲が偏っていれば予測は外れやすい。Google の講座は、100年分のデータでも7月の分しかなければ、1月の雨の量の予測の精度は下がると説明している。
論文の数字は、それぞれの論文のデータと条件での結果だ。FixMatch の40件の結果も、ラベルのない画像を合わせて学んだ条件のものだ。
よくある質問
教師あり学習とは簡単に言うと何か
正解のラベルを付けたデータでモデルを学ばせ、新しいデータの答えを予測させる方法だ。Google の講座は過去の試験の問題と答えで勉強する生徒にたとえている。迷惑メールの判定や雨の量の予測がその例だ。
分類と回帰の違いは何か
回帰は数値を予測し、分類はカテゴリを予測する。家の価格を出すのは回帰、メールが迷惑メールかどうかを当てるのは分類だ。分類は2つの値のどちらかを出す二値分類と、もっと多くの値から出す多クラス分類に分かれる。
教師なし学習との違いは何か
教師あり学習は正解のラベルが付いたデータで学び、教師なし学習はふつうラベルのないデータからパターンを見つける。教師なし学習の代表のクラスタリングは、グループの種類を人が決めない。
自己教師あり学習は教師あり学習の一種か
Google の用語集は、ラベルのない例から代わりのラベルを作り、教師なしの問題を教師ありの問題に変える手法と説明している。同じ用語集は、自己教師ありトレーニングを半教師あり学習のアプローチの1つとも書いている。BERT などの Transformer ベースのモデルの一部で使われている。
LLM は教師あり学習で作られているのか
学習の段階の1つとして使われることがある。Google の入門講座は、生成AIのモデルはまず教師なしの方法で学ばせ、そのあと教師あり学習や強化学習で追加で学ばせることもあると説明している。InstructGPT の論文では、GPT-3 を人が書いた手本の回答で教師あり学習でファインチューニングし、そのあと RLHF で調整した。
関連する用語
- 機械学習:データからモデルを学ばせて予測や生成に使う方法の全体
- 強化学習:行動の結果に返る報酬で学ぶ方式
- ディープラーニング:層を何段も重ねたニューラルネットワークで学ぶ機械学習の方法
- LLM(大規模言語モデル):文章の続きにくるトークンを予測して文章をつくる AI のモデル
- ファインチューニング:学習済みのモデルを用途に合わせて追加で学習させること
- RLHF:人が回答を比べた結果を使ってモデルを調整する方法
- 研究記事:BERT、FixMatch、InstructGPT
出典
- 機械学習の概要Google for Developers
- 教師ありの学習Google for Developers
- 機械学習の用語集Google for Developers
- データセット: データの特性(機械学習集中講座)Google for Developers
- データセット: ラベル(機械学習集中講座)Google for Developers
- 1. Supervised learning(scikit-learn 1.9.1 User Guide)scikit-learn
- 1.14. Semi-supervised learning(scikit-learn 1.9.1 User Guide)scikit-learn
- Improving language understanding with unsupervised learningOpenAI
- BERT: Pre-training of Deep Bidirectional Transformers for Language Understanding(arXiv:1810.04805)arXiv
- FixMatch: Simplifying Semi-Supervised Learning with Consistency and Confidence(arXiv:2001.07685)arXiv
- Learning Transferable Visual Models From Natural Language Supervision(arXiv:2103.00020)arXiv
- Training language models to follow instructions with human feedback(arXiv:2203.02155)arXiv
- Robust Speech Recognition via Large-Scale Weak Supervision(arXiv:2212.04356)arXiv
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)