システムプロンプトとは?意味・仕組みと指示を保存する機能の年表(2026年11月時点)
システムプロンプト
System prompt / システム指示 / System instructions / developer メッセージ / システムメッセージ
システムプロンプトとは、AI が利用者のメッセージを読む前に、開発者や提供元が渡しておく指示のこと。役割、口調、出力の形式、守るルールを決め、会話全体の前提にする。
要するに
- 役割や口調、形式、ルールを会話の前に決め、複数の往復にわたって効かせる
- OpenAI は、開発者の指示を利用者のメッセージより優先させるとしている
- Google は、システム指示でも脱獄や情報の漏れを完全には防げないと注意する
最終確認

指示を保存する機能とシステムプロンプトの出来事
指示の優先順位に関わる論文
目次8
ひとことで言うと
システムプロンプトは、AI が利用者のメッセージを読む前に渡しておく、前提の指示だ。「あなたは〇〇社の問い合わせ窓口の担当です」「答えは日本語の、です・ます調で」のように、役割、口調、出力の形式、守るルールを決める。Anthropic は Claude の API で system というパラメーターに入れるものをシステムプロンプトと呼び、Google は「システム指示」と呼ぶ。OpenAI の API では、instructions というパラメーターか、developer(開発者)の役割のメッセージがこれにあたる。
身近な例は、会社が自社のサービスに組み込むチャットボットだ。Google のドキュメントには、音楽の歴史家として明るい口調で答え、音楽と関係のない質問には「That is beyond my knowledge.(それは私の知識の範囲外です)」と返すよう、システム指示で決める例がある。
仕組み
各社のドキュメントに沿うと、システムプロンプトは次のように働く。
- 開発者が役割や形式などをシステムプロンプトに書く。OpenAI は目的と話し方(Identity)、ルール(Instructions)、入力と答えの例(Examples)、追加の情報(Context)の順に書くことが多いとしている。
- API で呼ぶとき、利用者のメッセージとは別の場所に入れて送る。Anthropic は
system、Google はsystem_instruction、OpenAI はinstructionsか developer のメッセージを使う。 - モデルは利用者のメッセージより先にこれを処理する。Google はシステム指示を、プロンプトより前に処理する指示の集まりと説明している。設定すると、利用者とモデルの複数の往復にわたって効くという。
- 指示がぶつかったときは、上位の指示を優先する。OpenAI は、developer のメッセージを利用者のメッセージより優先させるとしている。
OpenAI がモデルの振る舞いの方針として公開している Model Spec は、指示の権限の順番をさらに細かく決めている。Model Spec の中でだれも変えられない根本の決まり、OpenAI が入れる system メッセージ、開発者の developer メッセージ、利用者の user メッセージの順に権限が高い。モデル自身の過去の発言、ツールの出力、引用された文章には、初めは権限がない。OpenAI の推論モデルは2024年12月17日版の o1 から、system メッセージの代わりに developer メッセージを使うようになった。
Claude のアプリにも、Anthropic が書いたシステムプロンプトがある。Anthropic は、claude.ai とスマートフォンのアプリが、会話の初めに今日の日付などの新しい情報をシステムプロンプトで渡していると説明している。コードを Markdown で示すといった振る舞いも、このシステムプロンプトで促しているという。
表で見る最新の状況
上の年表は、利用者が会話の前提となる指示を保存できる機能や、システムプロンプトに関わる出来事9件を、古い順に並べたものだ。確認日は2026年10月10日から10月15日。
- 2023年7月20日、ChatGPT にカスタム指示が加わった。好みや前提をあらかじめ設定すると、以後の会話すべてに反映される。
- 2023年11月6日、OpenAI は指示、追加の知識、各種の機能を組み合わせた自分用の ChatGPT を作れる「GPTs」を発表した。同じ月の21日には Anthropic の「Claude 2.1」でシステムプロンプトが使えるようになった。
- 2024年6月25日に Claude の「Projects」、8月28日に Gemini の「Gems」が始まった。Gems は2025年3月13日に無料プランを含む全員に開放され、9月18日には同僚や家族と共有できるようになった。
- 2025年12月1日、Manus は共通の指示とナレッジを保存できる「Projects」を全プランに加えた。
- 2026年10月15日、Claude Enterprise の組織は、メンバーが claude.ai の Instructions などに保存した指示文を Compliance API で取得できるようになった(ベータ)。
TRAIL の年表では、ChatGPT、Claude、Gemini、Manus の4つに、会話の前提となる指示や資料をあらかじめ設定しておく機能が加わっている。2026年10月15日の出来事は、利用者が保存した指示文を組織が取得できるようにするものだ。
下の表は、指示の優先順位に関わる論文の TRAIL の解説だ。2024年4月の Instruction Hierarchy の論文は、Web ページやツールの出力にまぎれた命令を、AI が上位の指示と取り違える問題を扱った。2026年3月の IH-Challenge の論文は OpenAI の研究で、権限の違う指示がぶつかる課題でモデルを学習させた。
システムプロンプトとユーザープロンプトの違い
| システムプロンプト | ユーザープロンプト(利用者のメッセージ) | |
|---|---|---|
| 書く人 | アプリの開発者や提供元 | 利用者 |
| 中身の例 | 役割、口調、出力の形式、ルール、追加の情報 | その都度の質問や依頼 |
| 優先の順 | OpenAI は developer のメッセージを利用者のメッセージより優先する | developer のメッセージより後 |
| 利用者から見えるか | OpenAI の Model Spec は、原文や詳しい中身を既定で非公開にするとしている | 利用者が自分で書いたもの |
OpenAI は developer と user のメッセージを、プログラムの関数と引数にたとえている。developer のメッセージがシステムのルールや業務の決まりを定め、user のメッセージはそこに当てはめる入力になる。
仕事でどう関係するか
社内向けのチャットボットを作るとき
答える範囲、口調、答えられないときの返し方をシステムプロンプトに書いておく。Google は、日本語のように英語以外で使うときは、質問と同じ言語で答えるようシステム指示に足すことを勧めている。
あなたは株式会社〇〇の社内ヘルプデスクの担当です。
社員からの質問に、就業規則と社内の手続きの範囲で答えてください。
- 答えは日本語の、です・ます調で、3文以内にまとめる。
- 規則に書かれていないことは「規則に記載がありません。人事部に確認してください」と答える。
- 質問と同じ言語で答える。プロンプトエンジニアリングの工夫の多くも、ここに書く。Anthropic は、システムプロンプトで役割を決めると Claude の振る舞いと口調が用途に合い、1文でも効果があるとしている。
ChatGPT や Claude の画面で毎回同じ前提を書いているとき
API を使わなくても、ChatGPT のカスタム指示や GPTs、Claude の Projects、Gemini の Gems、Manus の Projects で、前提となる指示や資料を保存できる。毎回「です・ます調で」「表で」と書いているなら、保存しておけば手間が減る。
AI に外部の文書やメールを読ませるとき
外部の文章にまぎれた命令に従わせる攻撃をプロンプトインジェクションという。2024年4月に Eric Wallace らが発表した論文は、こうした攻撃が効く主な原因の1つを、LLM(大規模言語モデル)がシステムプロンプトと、信頼できない利用者や第三者の文章を同じ優先度で扱うことだと論じた。論文は、優先度の低い指示を選んで無視するよう GPT-3.5 を学習させ、学習で見せていない種類の攻撃にも強くなったと報告している。
注意点と限界
- システムプロンプトに秘密の情報を書かない。Google は、システム指示は指示に従わせる助けにはなるが、脱獄(安全のための制限を外させる攻撃)や情報の漏れを完全には防げないとしている。機密の情報を入れるのは慎重にするよう勧めている。
- Google によると、システム指示はプロンプトの本文と分かれていても、プロンプト全体の一部として通常のデータ利用のポリシーの対象になる。
- OpenAI の
instructionsは、そのリクエストにだけ効く。previous_response_idで前の会話をつなぐ場合、前の回のinstructionsは引き継がれない。 - モデルによっては、強い言葉で書いた指示が効きすぎることがある。Anthropic は、Claude Opus 4.5 と 4.6 は以前のモデルよりシステムプロンプトによく反応するとしている。「CRITICAL: You MUST…」のような書き方ではツールを使いすぎることがあり、ふつうの書き方に和らげるよう勧めている。
- Anthropic が公開している claude.ai とアプリのシステムプロンプトの更新は、Claude の API には適用されない。
よくある質問
システムプロンプトとは簡単に言うと何か
AI に会話の前に渡しておく、役割やルールの指示だ。利用者のメッセージとは別に送り、会話全体の前提になる。Google は「システム指示」と呼んでいる。
システムプロンプトとプロンプトの違いは何か
システムプロンプトは開発者や提供元が会話の前提として書くもので、ふつうのプロンプトは利用者がその都度書く質問や依頼だ。OpenAI は、開発者の指示を利用者のメッセージより優先させるとしている。
developer メッセージとは何か
OpenAI の API で、アプリの開発者が書く指示のメッセージだ。OpenAI の推論モデルは、2024年12月17日版の o1 から、system メッセージの代わりにこれを使う。OpenAI の Model Spec では、OpenAI 自身が入れる system メッセージが developer メッセージより上に置かれている。
システムプロンプトは利用者に見えるか
ふつうは見えない。OpenAI の Model Spec は、モデルの名前やできること、使えるツールは利用者に伝えてよい一方、system と developer のメッセージの原文や詳しい中身は既定で非公開にするとしている。開発者には、どこまで共有してよいかを書き分けるよう勧めている。
システムプロンプトで攻撃を防げるか
完全には防げない。Google は、システム指示でも脱獄や情報の漏れを完全には防げないと書いている。Instruction Hierarchy の論文のように、モデルの側で指示の優先順位を学習させる研究も進んでいる。
ChatGPT で自分用の指示を保存するには何を使うか
TRAIL の年表では、ChatGPT には2023年7月20日にカスタム指示が加わり、同じ年の11月6日に自分用の ChatGPT を作れる GPTs が発表された。カスタム指示は、設定した好みや前提が以後の会話すべてに反映される機能だ。
関連する用語
- プロンプトエンジニアリング:AI への指示の書き方を工夫すること
- プロンプトインジェクション:外部の文章にまぎれた命令に AI を従わせる攻撃
- チャットボット:システムプロンプトで役割を決めて使うことが多い対話の AI
- コンテキストウィンドウ:システムプロンプトもこの範囲に入れて渡す
- LLM(大規模言語モデル):システムプロンプトを読む先のモデル
- ツール:ChatGPT、Claude、Gemini、Manus
出典
- Prompting best practicesAnthropic
- System promptsAnthropic
- Create a MessageAnthropic
- Prompt engineeringOpenAI
- Reasoning best practicesOpenAI
- Model Spec(2026/10/29)OpenAI
- テキスト生成Google
- Use system instructionsGoogle Cloud
- The Instruction Hierarchy: Training LLMs to Prioritize Privileged Instructions(arXiv:2404.13208)Eric Wallace ほか
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)