アノテーションとは?意味・仕組みとラベルの作り方で見る論文6本(2026年11月時点)
アノテーション
データアノテーション / ラベリング / Data labeling
アノテーションとは、機械学習のモデルに学ばせるデータに、写っている物の種類や枠、文章の分類、音声の書き起こしなどの正解の情報(ラベル)を付ける作業のこと。
要するに
- 基準書を書き、1件を複数の人に付けてもらい、結果をまとめて一致の度合いで見直す
- 生成AIでは手本の回答づくりや回答の比較もラベル付けで、RLHF の材料になる
- AI にラベルを付けさせる方法もあり、人の結果と比べて確かめることが前提になる
最終確認

ラベルの作り方で見る論文6本
- InstructGPTの原論文を読む 人の評価で応答はどう変わったかTraining language models to follow instructions with human feedback
- Whisperの原論文を読む 大量の音声で認識の頑健さを測るRobust Speech Recognition via Large-Scale Weak Supervision
- Constitutional AIの原論文を読む 原則を使って応答を直すConstitutional AI: Harmlessness from AI Feedback
- Self-Instruct 論文の解説:モデル自身に指示データを作らせるSelf-Instruct: Aligning Language Models with Self-Generated Instructions
- Segment Anythingの原論文を読む 指示で領域を切り出すSegment Anything
- MT-Benchを原論文から読む AIにAIの回答を評価させられるかJudging LLM-as-a-Judge with MT-Bench and Chatbot Arena
目次8
ひとことで言うと
アノテーション(データアノテーション、ラベリングとも呼ぶ)は、機械学習のモデルに学ばせるデータに、正解の情報(ラベル)を付ける作業だ。Google の機械学習の講座は、1人以上の人が情報を調べてラベルの値を決めたデータを「人間が生成したデータ」と呼び、複数の気象学者が空の写真を見て雲の種類を決める例を挙げている。
たとえば、写真ごとに写っている物の名前を付ける作業や、写真の中の物を四角い枠で囲む作業がアノテーションにあたる。こうして正解を付けたデータがあると、教師あり学習で、新しい写真を見分けるモデルを学ばせられる。
仕組み
何にどんな正解を付けるかは、データの種類で変わる。AWS のラベル付けのドキュメントは、組み込みの作業の種類を次のように分けている。
- 画像:写真に1つか複数のラベルを付ける分類、物を四角で囲む境界ボックス(物体の枠)、画素ごとに何が写っているかを塗り分けるセマンティック セグメンテーション(領域の分割)。
- 文章:文章を種類に分ける分類と、文中の語句を選んで種類を付ける固有表現抽出(NER)。
- 動画:動画の分類と、フレームごとに物を見つける作業、物を追う作業。
- 3次元の点群:物の検出と追跡、領域の分割。
音声では、話した内容の書き起こしが正解になる。音声認識のモデル Whisper の論文は、人が確かめた書き起こしを「ゴールドスタンダード」と呼んでいる。
作業の流れはクラウドのドキュメントと Google の講座から、次の5段にまとめられる。
- 基準書(作業の指示)を書く。Azure Machine Learning のドキュメントは、合うラベルがないとき、複数のラベルが合いそうなとき、対象が一部隠れているときや画像の端で切れているときにどうするかを、指示に書いておくよう挙げている。
- 作業者を決める。Google の講座は、作業者に要る技能、必要な件数と期限、予算を考えるよう挙げている。
- 1件を複数の人に付けてもらう。AWS のコンソールの初期値は、文章と画像の分類、セマンティック セグメンテーション、固有表現抽出で3人、境界ボックスで5人だ。人数を増やすとラベルは正確になりうるが、費用も増える。
- 結果をまとめる。AWS は1人分の作業の結果を「アノテーション」、複数人の結果をまとめて1件に1つ決めたものを「ラベル」と呼び分けている。枠なら、作業者ごとの枠のうち重なりの大きいものを選んで平均する。Azure の合意によるラベル付け(プレビュー)では、決めた人数の意見がそろえばラベルが決まり、最大の人数でもそろわなければ、プロジェクトの持ち主が決める。
- 一致の度合いを測って見直す。Google の用語集は、人の評価者どうしがどれだけ一致するかを「採点者間の一致度(inter-rater agreement)」と呼び、一致しないときは作業の指示を直す必要があるかもしれないと書いている。
Google の講座は、人が付けたラベルを「ゴールドラベル」、分類のモデルが自動で付けたラベルを「シルバーラベル」と呼ぶことが多いと書いている。機械が付けたラベルの品質は大きくばらつくことがあり、講座は学習の前に品質と偏りを把握するよう求めている。
表で見る最新の状況
上の「ラベルの作り方で見る論文6本」は、TRAIL の研究記事から、人やモデルが正解の情報を作る方法に関わる論文を6本選び、古い順に並べたものだ。論文の内容は2026年11月6日に arXiv の論文のページで確かめた。
InstructGPT(2022年3月)では、OpenAI は約40人の外部の作業者に、手本の回答を書く作業と、モデルの複数の回答を比べる作業を頼んだ。学習用のプロンプトの数は、手本のデータで約1万3,000件、比較のデータで3万3,000件だ。作業者どうしの一致率は72.6±1.5%、学習のデータを作っていない別の作業者では77.3±1.3%だった。この比較のデータを使う調整の方法が RLHF だ。
Whisper(2022年12月)は、インターネット上の音声と書き起こしの組68万時間分で学ばせた。ネット上の書き起こしには既存の音声認識の出力も多いため、論文は機械が作った書き起こしを見つけて除く手がかりを数多く用意した。
Constitutional AI(2022年12月)は、有害な出力を示す人のラベルを使わずに、害の少ない AI のアシスタントを学ばせる方法だ。害の少なさについて人が与えたのは規則や原則の一覧だけで、2つの回答のどちらが良いかはモデルが判定した。論文はこれを RLAIF(AI のフィードバックによる強化学習)と呼んでいる。
Self-Instruct(2022年12月)は、言語モデルに指示の例を作らせて調整に使い、アノテーションをほとんど使わない方法と論文に書いた。
Segment Anything(2023年4月)は、モデルを使いながら人が注釈を付ける「データエンジン」で、領域のデータを作った。1段目ではモデルの補助を受けて専門の作業者が領域を付け、1件あたりの平均の時間はモデルの改善につれて34秒から14秒に縮んだ。2段目ではモデルが付けた領域に人が付け足し、3段目ではモデルだけで付けた。11億件の領域の99.1%は全自動で作られた。品質を確かめるため、500枚の画像(約5万件の領域)を専門の作業者に直させたところ、自動の領域と直した領域の組の94%で、重なりの度合い(IoU)が90%を超えた。論文は、過去の研究による作業者どうしの一致を IoU で85〜91%と紹介している。
MT-Bench(2023年6月)は、AI に AI の回答を判定させる方法を調べた。GPT-4 による判定は人の判定と80%を超えて一致し、人どうしの一致と同じ水準だった。一方で、回答の置かれた位置で特定の側を好む偏りや、長い回答を好む偏りもあった。
TRAIL の研究記事の6本では、2022年12月以降の5本が、人が1件ずつ付けるラベルや判定の代わりになる方法を扱っている。そのうち Segment Anything と MT-Bench は、機械が作ったラベルや判定を人の結果と比べ、どこまで一致するかを数字で示した。
アノテーションと教師あり学習、合成データ、RLHF の違い
| アノテーション | 教師あり学習 | 合成データ | RLHF | |
|---|---|---|---|---|
| 何か | データに正解の情報を付ける作業 | 正解付きのデータでモデルを学ばせる方式 | モデルなどで作ったデータ | 回答を比べた結果でモデルを調整する方法 |
| 例 | 写真の物を枠で囲む、文章を分類する | 自転車を持っているかを予測する分類(Google の講座の例) | Self-Instruct でモデルが作った指示の例 | InstructGPT の比較のデータ |
アノテーションは、教師あり学習や RLHF に使うデータを作る段階にあたる。合成データは、データそのものをモデルなどで作る点で違う。
仕事でどう関係するか
社内のデータに正解を付けるとき
Google の講座は、人がラベルを付ける方法の利点として、データの持ち主が明確で一貫した基準を作ることになる点を挙げている。迷う場面の扱いは、Azure のドキュメントが挙げる問いに沿って基準書に書いておける。複数の人に同じデータを付けてもらい、一致の度合いが低ければ、まず基準書を見直す。Google の講座は、不一致が見つかったときに、自分の評価が正しいと決めつけないよう書いている。
AI にラベルを付けさせるとき
AWS の自動のラベル付けは、まず一部のデータを無作為に選んで人に付けさせ、そのデータで学ばせたモデルが確信の高いものだけを自動で付ける。確信の低いものは人に回す。画像と文章の分類では、人が付けた場合と比べて95%以上の正確さを見込める確信の水準を、しきい値にしている。AWS は、このモデルを調整せずに推論に使うなら、無作為に選んだような代表的な一部のデータで正確さを確かめるよう強く勧めている。
生成AIに回答の良し悪しを判定させるときは、MT-Bench の論文が示した位置の偏りへの対策が使える。論文は対策の1つとして、2つの回答の順を入れ替えて2回判定させ、どちらの順でも選ばれたときだけ勝ちとする控えめな方法を挙げている。
次の質問への回答Aと回答Bを読み、どちらが質問に正確に答えているかを「A」「B」「同じ」のどれかで答えてください。
回答の長さは判断の理由にしないでください。同じ依頼を、回答Aと回答Bを入れ替えてもう一度出し、どちらの順でも選ばれた回答だけを勝ちとする。
生成AIの回答を比べる作業を頼まれたとき
何を優先して比べるかで、集まるデータが変わる。InstructGPT の論文では、学習のデータを作るときは利用者の役に立つことを優先させ、最後の評価では正確さと害のなさを優先させた。比べる作業を頼まれたら、どの基準を先に見るかを依頼した側に確かめてから始める。
ラベル付けの道具を選ぶとき
クラウドのラベル付けの機能は、提供の状況が変わることがある。2026年11月6日に確かめたところ、AWS のドキュメントには、Amazon SageMaker Ground Truth は新しい利用者を受け付けておらず、新しい機能を加える予定もないという注記があった。同じ注記は、既存の利用者はこれまでどおり使えるとも書いている。Azure Machine Learning のドキュメントには、データのラベル付けを2026年9月30日に廃止し、その日にデータのラベル付けのワークロードを削除するという警告が載っていた。道具を選ぶときは、提供の状況と、付けたラベルを取り出せるかを確かめる。
注意点と限界
人が付けたラベルでも、品質が高いとは限らない。Google の講座は、データを集めるときや整えるときに、人の誤り、偏り、悪意が入りうると書いている。
人の好みのデータは、作業者が誰かに左右される。InstructGPT の論文は、モデルを合わせた相手は作業者の好みで、その好みは受けた指示や、有償の仕事として受けたという状況などに影響されたと書いている。作業者の多くは、米国か東南アジアに住む英語を話す人だった。
補助のモデルもデータの偏りを引き継ぐ。Azure のドキュメントは、データの80%が1つの種類なら、補助のモデルの学習に使うデータもおよそ80%がその種類になると説明している。
個人の情報を含むデータは扱いに注意がいる。InstructGPT の論文は、個人を特定できる情報を含むプロンプトを学習用のデータから除いた。Segment Anything の論文は、公開した画像の顔と車のナンバープレートをぼかした。
よくある質問
アノテーションとラベリングは同じ意味か
呼び分けるかどうかは資料によって違う。Google の用語集は、採点者間の一致度を「アノテーター間の一致度」とも呼ぶ。AWS は、仕組みの4段目のとおり2つを呼び分けている。
AI にラベルを付けさせてもよいか
人の結果と比べて確かめたうえでなら、使える場合がある。AWS の自動のラベル付けは、人が付けたラベルと比べた正確さでしきい値を決める。MT-Bench の論文では、GPT-4 の判定は人の判定と80%を超えて一致したが、位置や長さによる偏りもあった。
RLHF とアノテーションはどう関係するか
RLHF の材料になる、人が回答を比べた結果を集める作業も、ラベル付けにあたる。InstructGPT の論文は、この比較を人がラベルを付けたもの(human-labeled comparisons)と書き、作業者が付けた順位のデータで、作業者が好む回答を予想するモデルを学ばせた。
ラベルの一致はどう測るのか
人どうしの一致は評価者間の一致度で測り、代表的な方法に Cohen のカッパ係数がある。枠では、2つの範囲の重なった部分を、合わせた範囲の広さで割った IoU を使う。IoU は0から1の値をとり、1は2つの枠が完全に重なることを表す。
関連する用語
出典
- データセット: ラベル(機械学習集中講座)Google for Developers
- カテゴリデータ: 一般的な問題(機械学習集中講座)Google for Developers
- 機械学習の用語集Google for Developers
- Built-in Task Types(Amazon SageMaker AI Developer Guide)AWS
- Annotation consolidation(Amazon SageMaker AI Developer Guide)AWS
- Automate data labeling(Amazon SageMaker AI Developer Guide)AWS
- 画像ラベル付けプロジェクトを設定する(Azure Machine Learning)Microsoft Learn
- Training language models to follow instructions with human feedback(arXiv:2203.02155)arXiv
- Robust Speech Recognition via Large-Scale Weak Supervision(arXiv:2212.04356)arXiv
- Constitutional AI: Harmlessness from AI Feedback(arXiv:2212.08073)arXiv
- Self-Instruct: Aligning Language Model with Self Generated Instructions(arXiv:2212.10560)arXiv
- Segment Anything(arXiv:2304.02643)arXiv
- Judging LLM-as-a-Judge with MT-Bench and Chatbot Arena(arXiv:2306.05685)arXiv
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)