ベクトルデータベースとは?意味・仕組みと検索の論文、埋め込みの年表(2026年11月時点)
ベクトルデータベース
Vector database / ベクトルDB / ベクトルストア / Vector store
ベクトルデータベースとは、文章や画像を意味を表す数値の並び(ベクトル)に変えて保存し、質問と意味の近いものを速く探せるようにしたデータベースのこと。RAG の検索先によく使われる。
要するに
- 文章や画像をベクトルで保存し、質問のベクトルに近い順に探して返す
- 近似の探し方で速さを上げる代わりに、取りこぼしが少し出ることがある
- OpenAI と Google の API は、分割から索引づくりまで自動で行う
最終確認

埋め込みと検索の基盤の出来事
ベクトルで探す検索に関わる論文
- Sentence-BERT 論文の解説:文をベクトルにして探す速度と精度Sentence-BERT: Sentence Embeddings using Siamese BERT-Networks
- DPRの原論文を読む 質問に合う文章をどう探すかDense Passage Retrieval for Open-Domain Question Answering
- ColBERTの原論文を読む 検索精度と応答速度をどう両立したかColBERT: Efficient and Effective Passage Search via Contextualized Late Interaction over BERT
- Contrieverの原論文を読む 正解付きデータなしで文書を探すTowards Unsupervised Dense Information Retrieval with Contrastive Learning
- RAGの原論文を読む 検索と文章生成をどう結びつけたかRetrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks
- RETROの原論文を読む 大量の外部文書を引いて書くImproving language models by retrieving from trillions of tokens
目次8
ひとことで言うと
ベクトルデータベースは、文章や画像を「ベクトル」と呼ぶ数値の並びに変えて保存し、意味の近いものを探せるようにしたデータベースだ。Google Cloud は、文章、画像、音声のようなデータを数値で表したベクトルを保存し、索引をつくり、問い合わせができるデータベースだと定義している。
ふつうの検索は、質問と同じ語が入っているかで探す。ベクトルデータベースは意味の近さで探すので、同じ語がなくても関係する文書が見つかる。OpenAI のドキュメントは「月に行ったのはいつ?」という質問の例を挙げている。「最初の月面着陸は1969年7月だった」という文は質問と語が重ならないが、意味の近さでは3つの候補のうちいちばん高く出る。
仕組み
Google Cloud と Anthropic の説明に沿うと、ベクトルデータベースは次の順で使う。
- 文書を小さな部分(チャンク)に分け、エンベディングのモデルで部分ごとにベクトルにする。エンベディングは、意味の近いものほど近い位置に来るように、データを数値に置き換える方法だ。
- ベクトルを、元の文章や属性(日付や作成者など)と一緒に保存する。
- 索引をつくる。近いベクトルどうしをまとめておき、探す範囲を絞れるようにする。
- 質問が来ると、質問も同じようにベクトルにし、いちばん近い k 個を探す。これを最近傍探索という。近さは内積、コサイン類似度、ユークリッド距離などで測る。
- 必要なら、属性で絞り込む。
Google Cloud によると、ベクトルにはひとつの決まった並び順がないため、ふつうの文字や数値とは違う索引と探し方が要る。すべてのベクトルとの距離を正確に計算すると費用がかかるので、多くは近似最近傍探索(ANN)を使う。精度(取りこぼしの少なさ)を少し譲る代わりに、探す速さを大きく上げる方法だ。
索引の形には、ベクトルのまとまりを並べる「リスト」、近いベクトルどうしをつなぐ「グラフ」、まとまりを枝分かれで表す「木」がある。それぞれ、探す速さ、使うメモリ、索引をつくる時間で一長一短がある。グラフを使う方法の1つが、Yu. A. Malkov らが2016年3月に発表した HNSW だ。論文は、層を重ねたグラフの上の層から探し始め、データが増えても探す手間が対数的にしか増えないようにしたと報告している。
Matthijs Douze らが2024年1月に発表した Faiss の論文は、ベクトルの類似検索をベクトルデータベースの中心の機能と位置づける。Faiss はベクトルを探す、まとめる、圧縮する、変換するための道具をそろえたライブラリだ。Google Cloud の Vector Search は、Google Research が開発した ScaNN という方法を使っている。
表で見る最新の状況
上の年表は、ベクトルを作る埋め込みのモデルと、文書を検索できる形に整える基盤の出来事3件を、古い順に並べたものだ。確認日は2026年10月10日から10月20日。
- 2025年9月22日、Dify は「v1.9.0 で Knowledge Pipeline を追加」した。企業内の雑多なデータを LLM 向けの文脈に変える処理を、画面上のパイプラインとして組める。
- 2026年2月1日、Perplexity は文書の意味を数値にする Embeddings API と、Agent API を「一般提供」にした。
- 2026年10月7日、Perplexity は文章と画像を検索するための埋め込みモデル pplx-embed-v2-late を、0.6B と 9B の2つの大きさで Hugging Face に公開した。1つの入力を複数のベクトルで表し、PDF のページを文字に起こさずに検索できる。
TRAIL の年表では、pplx-embed-v2-late の2つのモデルが埋め込みの空間を共有し、9B で作った索引を 0.6B で検索できる。索引を作るモデルと検索するモデルを分けられる例だ。
下の表は、ベクトルで探す検索に関わる論文の TRAIL の解説6本だ。2019年の Sentence-BERT は文ごとにベクトルを作って比べる計算を減らし、2020年の DPR は質問と文章を別々のベクトルにして探した。ColBERT は単語ごとの対応を最後に計算し、Contriever は人手のラベルなしで検索のモデルを学習した。RAG と RETRO は検索した文書を文章の生成に使う研究だ。
ベクトルデータベースとふつうのデータベース、キーワード検索の違い
| ベクトルデータベース | ふつうのデータベース(表の形) | キーワード検索(BM25 など) | |
|---|---|---|---|
| 探し方 | 意味の近さ(ベクトルの距離) | 値の一致や範囲 | 語の一致 |
| 得意なこと | 言い換えた質問に関係する文書を探す | 「20ドル未満」のような条件で絞る | 型番やエラーコードのような正確な語を探す |
| 苦手なこと | Anthropic によると、「TS-999」のような正確な語の一致を取りこぼすことがある | Google Cloud によると、ふつうの SQL の問い合わせは「ミッドセンチュリーの雰囲気」のような意味をくめない | 共通の語がない言い換え |
Google Cloud は、意味の近さと、価格のような条件での絞り込みを組み合わせる問い合わせを紹介している。OpenAI の検索の API にも、意味の近さと語の一致を合わせて順位をつける設定がある。Anthropic も埋め込みと BM25(語の出方で文書の関係の深さを測る方法)を組み合わせると、関係する部分をより正確に取り出せるとしている。
仕事でどう関係するか
社内文書に答える AI を作るとき
RAG(検索した資料をもとに AI に答えさせる仕組み)では、ベクトルデータベースが資料の検索先になる。Anthropic の説明では、チャンクのベクトルをベクトルデータベースに保存しておき、質問が来ると意味の近いチャンクを探してプロンプトに足す。
API で作るなら、ベクトルデータベースを自分で用意しない方法もある。OpenAI の vector stores と Google の Gemini API のファイル検索ストアは、ファイルを入れると分割、埋め込み、索引づくりまでを自動で行う。Anthropic は自社の埋め込みモデルを提供しておらず、提供元の1つとして Voyage AI を挙げている。
費用を見積もるとき
料金のかかり方は提供元で違う。OpenAI の vector stores は、すべての保存先の合計の容量に応じて料金がかかり、一定の量までは無料だ。保存先に期限を設けると、期限が来たときにファイルが消え、料金もかからなくなる。Google のファイル検索は、保存と、質問のときの埋め込みが無料だ。料金はファイルを最初に登録するときの埋め込みと、取り出した文書のトークンにかかる。Google Cloud の Vector Search では、索引を置く仮想マシンと、索引をつくって更新する処理に料金がかかる。
今あるデータベースを使い続けたいとき
ベクトルの検索は、専用のデータベースでなくてもできることがある。Google Cloud は、AlloyDB for PostgreSQL、Spanner、BigQuery にベクトルの機能を組み込んでいる。AlloyDB は PostgreSQL の拡張機能 pgvector に対応している。Google は、ほとんどのデータベースがベクトルに対応していくとの見方を示している。
注意点と限界
- 近似の検索は速い代わりに、関係する文書を取りこぼすことがある。Google Cloud は、ANN が精度を少し譲って速さを上げる方法だと説明している。
- 意味の検索は、正確な語の一致に弱い。型番や社内の略語で探すことが多いなら、キーワード検索と組み合わせる。Anthropic は、チャンクに文脈を補う「Contextual Retrieval」という方法で、検索の失敗を49%減らせたと報告している。
- OpenAI の検索では、似ている度合いの下限を上げると関係の深い部分に絞れるが、役に立つ部分まで外れることがある。
- 保存先に入れたデータは、消すまで残ることがある。Google のファイル検索では、アップロードしたファイルそのものは48時間後に消えるが、ファイル検索ストアに取り込んだデータは削除するまで残る。
- Google Cloud の Vector Search では、データの量と絞り込みの条件が、シャード(データを分けて置く単位)の数に影響する。絞り込みの条件が多いと、メモリの使用量が増える。
よくある質問
ベクトルデータベースとは簡単に言うと何か
文章や画像を数値の並び(ベクトル)にして保存し、意味の近いものを探せるデータベースだ。同じ語がなくても、意味が近ければ見つけられる。
ベクトルデータベースと RAG の関係は何か
RAG で資料を探す先として使われることが多い。資料のチャンクをベクトルにして保存しておき、質問と意味の近いチャンクを取り出して AI に渡す。Google Cloud もベクトルデータベースの使い道の最初に RAG を挙げている。
エンベディングとベクトルデータベースの違いは何か
エンベディングはデータをベクトルに変える方法や、その結果のベクトルのことで、ベクトルデータベースはそれを保存して探す仕組みだ。Faiss の論文は、ベクトルデータベースがふつう大量の埋め込みのベクトルを扱うと書いている。
ふつうのデータベースでベクトル検索はできるか
できる場合がある。Google Cloud は AlloyDB for PostgreSQL、Spanner、BigQuery でベクトルの検索に対応しており、AlloyDB は pgvector を使える。
RAG を作るにはベクトルデータベースを自分で用意する必要があるか
必ずしも要らない。OpenAI の vector stores や Google のファイル検索ストアは、ファイルの分割、埋め込み、索引づくりまでを自動で行う。資料が少なければ、検索を使わない方法もある。Anthropic は2024年9月の記事で、資料が20万トークン(約500ページ)より小さければ、RAG を使わずに全部をプロンプトに入れればよいとしている。
近似最近傍探索(ANN)とは何か
質問のベクトルに近いものを、すべてと比べずに速く探す方法だ。Google Cloud は、取りこぼしの少なさを少し譲る代わりに速さを大きく上げる方法だと説明している。HNSW もその方法の1つだ。
関連する用語
- エンベディング:データを意味を表すベクトルに変える方法
- RAG:検索した資料をもとに AI に答えさせる仕組み。ベクトルデータベースがよく検索先になる
- LLM(大規模言語モデル):検索した資料を渡して答えさせる先のモデル
- コンテキストウィンドウ:取り出した資料もこの範囲に入れて渡す
- マルチモーダル:文章と画像など複数の種類のデータを扱うこと
- ツール:Dify、Perplexity、ChatGPT、Gemini
出典
- What is a vector database & how does it work?Google Cloud
- Vector SearchGoogle Cloud
- ファイル検索Google
- RetrievalOpenAI
- EmbeddingsAnthropic
- Introducing Contextual RetrievalAnthropic
- Efficient and robust approximate nearest neighbor search using Hierarchical Navigable Small World graphs(arXiv:1603.09320)Yu. A. Malkov、D. A. Yashunin
- The Faiss library(arXiv:2401.08281)Matthijs Douze ほか
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)