AI推進法とは?意味・仕組みとEU AI法との違い(2026年11月時点)
AI推進法(えーあいすいしんほう)
AI法 / 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律 / 日本のAI法
AI推進法とは、日本が2025年に定めた、AI の研究開発と活用を国として進めるための法律のこと。基本理念、人工知能基本計画、人工知能戦略本部を定め、罰則の規定はない。
要するに
- 2025年6月4日に公布・一部施行され、9月1日に全面施行された
- 政府の人工知能基本計画と、首相が本部長の人工知能戦略本部を定める
- 会社にはAIの活用に努め、国の施策に協力することを求める。罰則はない
最終確認

目次8
ひとことで言うと
AI推進法は、日本が AI の研究開発と活用を進めるために定めた法律で、正式な名前は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号)という。内閣府は「AI法」と略している。国が AI の政策を計画的に進めるための基本理念、基本計画、司令塔になる「人工知能戦略本部」を定めている。
内閣府は、AI のイノベーションを進めながらリスクに対応するための法律だと説明している。2025年6月4日に公布され、一部が施行された。2025年9月1日に、人工知能戦略本部の設置の規定などを含めて全面施行された。
身近な例は会社で生成AIを業務に取り入れる場面だ。この法律は、AI を事業に使おうとする会社を「活用事業者」と呼び、国の施策に協力することを求めている(第7条)。
このページは e-Gov 法令検索の条文と、内閣府、総務省、経済産業省の公式ページをまとめたもので、法的な助言ではない。TRAIL は法律事務所ではない。自社に関係するかは条文と公式の資料で確かめる必要がある。
仕組み
条文は4つの章と附則でできている。
- 総則(第1条〜第10条):目的、「人工知能関連技術」の定義、基本理念、国、地方公共団体、研究開発機関、活用事業者、国民それぞれの責務を定める。
- 基本的施策(第11条〜第17条):研究開発の推進、計算設備やデータセットの整備と共用、適正性の確保、人材の確保、教育、調査研究、国際協力を国が進めると定める。
- 人工知能基本計画(第18条):政府が AI の施策の基本的な計画を作り、閣議で決めて公表すると定める。
- 人工知能戦略本部(第19条〜第28条):内閣に本部を置く。本部長は内閣総理大臣で、ほかのすべての国務大臣が本部員になる。本部の事務は内閣府が担う。
第2条は「人工知能関連技術」を、人間の認知、推論、判断にかかわる知的な能力を人工的な方法で代わりに実現する技術などと定義している。
第3条4項は、AI が不正な目的や不適切な方法で使われた場合のおそれを挙げている。犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害などだ。そのため、研究開発と活用の過程の透明性を確保するなど、必要な施策を講じなければならないとしている。
条文には、違反した人や会社を罰する規定がない。国は、権利や利益を侵害する事案を分析して対策を検討する(第16条)。その結果をもとに、研究開発機関や活用事業者などへの指導、助言、情報の提供などの措置を講じるとしている。
附則第2条は、政府が国際的な動向などを考えながら法律の施行の状況を検討し、必要があれば措置を講じると定めている。
表で見る最新の状況
TRAIL の年表には、AI推進法を扱った出来事がまだない。そのため、このページには TRAIL の DB の表を載せていない。代わりに、内閣府、総務省、経済産業省の公式ページにある日付を並べた(確認日:2026年11月1日)。
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2024年4月19日 | AI事業者ガイドライン第1.0版を公表(総務省、経済産業省) |
| 2024年11月22日 | AI事業者ガイドライン第1.01版を公表 |
| 2025年3月28日 | AI事業者ガイドライン第1.1版を公表 |
| 2025年6月4日 | AI推進法を公布し、一部を施行 |
| 2025年9月1日 | 全面施行。人工知能戦略本部の設置の規定などが施行された |
| 2025年9月12日 | 第1回人工知能戦略本部を開催 |
| 2025年12月19日 | 「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」を本部で決定 |
| 2025年12月23日 | 人工知能基本計画を閣議決定 |
| 2026年3月31日 | AI事業者ガイドライン第1.2版を公表 |
| 2026年7月14日 | 人工知能基本計画(第Ⅱ期)を閣議決定 |
第13条は、国が国際的な規範の趣旨に沿った指針を整えると定めている。第18条は、政府が人工知能基本計画を定めると定めている。
内閣府の指針のページは各府省庁の AI のガイドラインの一覧も載せている。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」、経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」などだ。
AI推進法とEU AI法の違い
日本の AI推進法とEU AI法は、どちらも AI についての法律だが、定めている中身が違う。EU AI法の側は TRAIL の EU AI法のページと同じ事実だけを書いた。
| AI推進法(日本) | EU AI法 | |
|---|---|---|
| 正式な名前 | 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号) | Regulation (EU) 2024/1689 |
| 始まり | 2025年6月4日に公布・一部施行、9月1日に全面施行 | 2024年8月1日に発効し、段階的に適用 |
| 主な中身 | 基本理念、国などの責務、基本的施策、基本計画、人工知能戦略本部 | AI の使い方をリスクの大きさで4段階に分け、禁止、高リスクの義務、透明性の義務を定める |
| 会社に求めること | 活用事業者は AI の活用に努め、国と地方公共団体の施策に協力する | 提供者と導入者に、リスクの段階に応じた義務。汎用AIモデルの提供者にも義務 |
| 違反への制裁 | 条文に罰則の規定はない | 制裁金がある。禁止への違反は最大3,500万ユーロか、前年の全世界の売上高の7%の高いほう |
| 国外の事業者 | 条文に、国外の事業者を対象にする定めはない | EU の外の会社も、EU で AI を売る場合や、出力が EU で使われる場合は対象 |
AI推進法は国の施策の基本となる事項を定める法律で、AI の使い方をリスクで分けて義務を課す EU AI法とは中身が違う。
仕事でどう関係するか
自社で AI を使うとき
第7条の「活用事業者」には、AI を使った製品やサービスを開発、提供しようとする会社に加え、事業で AI を使おうとする会社も入る。条文が活用事業者に求めているのは、AI の活用による効率化や新産業の創出に努めることと、国と地方公共団体の施策に協力することだ。
社内のルールを作るとき
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、内閣府の一覧で次のように説明されている。事業活動で AI の開発、提供、利用を担うすべての者に、必要な取り組みの基本的な考え方を示すものだ。最新の第1.2版は2026年3月31日に公表された。チェックリストとワークシート(別添7)も公開されている。
両省はガイドラインを使いやすくするために、チャットボット(2026年3月26日公表)と「AI事業者ガイドライン活用の手引き(案)」(2026年3月31日公表)も出している。
著作権や個人情報が気になるとき
第3条4項は、AI の不適切な使い方が著作権の侵害や個人情報の漏えいを助長するおそれに触れている。ただし、具体的な線引きはこの法律には書かれていない。内閣府の一覧には、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)や、個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月)が載っている。
EU の顧客や取引先があるとき
AI推進法の条文には、EU AI法の第2条のような、国外の事業者を対象にする定めはない。EU で AI のサービスを出す会社や、AI の出力が EU で使われる会社は、日本の法律とは別に EU AI法の義務を確かめる必要がある。
注意点と限界
- このページは法的な助言にあたらない。TRAIL は法律事務所ではない。自社が何をすべきかは、e-Gov 法令検索の条文と、各省の公式の資料で確かめる必要がある。
- 人工知能基本計画は2025年12月23日に閣議決定され、2026年7月14日に第Ⅱ期が閣議決定された。参照するときは、どの時点の計画かを確かめる。
- 附則第2条は、政府が施行の状況について検討を加え、必要があれば措置を講じると定めている。
- AI事業者ガイドラインは版を重ねている。社内で参照するときは、版の番号と公表日を確かめる。
よくある質問
AI推進法はいつから施行されているか
2025年6月4日に公布され、一部が施行された。2025年9月1日に、人工知能戦略本部の設置の規定などを含めて全面施行された。
AI推進法に罰則はあるか
条文に、違反を罰する規定はない。国は、権利や利益の侵害が生じた事案を分析し、研究開発機関や活用事業者などに指導、助言、情報の提供などの措置を講じると定めている(第16条)。
会社は何をしなければならないか
条文は、事業で AI を使おうとする会社(活用事業者)に、AI の活用に努めることと、国と地方公共団体の施策に協力することを求めている(第7条)。具体的な取り組みの考え方は、総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」が示している。
AI推進法とAI事業者ガイドラインの違いは何か
AI推進法は国会が定めた法律で、国の施策の基本となる事項と、人工知能戦略本部を定めている。AI事業者ガイドラインは総務省と経済産業省が公表している文書で、AI の開発、提供、利用を担う者の取り組みの基本的な考え方を示している。
人工知能戦略本部とは何か
AI の施策を総合的かつ計画的に進めるために、内閣に置かれた組織だ(第19条)。本部長は内閣総理大臣で、副本部長は内閣官房長官と人工知能戦略担当大臣が務める。人工知能基本計画の案を作ることが本部の仕事の1つだ。
関連する用語
出典
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)