EU AI法とは?意味・仕組みと適用の日程(2026年11月時点)
EU AI法(いーゆーえーあいほう)
AI法 / AI Act / 欧州AI法
EU AI法とは、EU が2024年に定めた AI の規則のこと。AI の使い方をリスクの大きさで分け、禁止、厳しい義務、AI だと分かるようにする義務を段階的に適用する。
要するに
- 禁止、高リスク、透明性、最小限の4段階に分け、汎用AIモデルにも義務を課す
- 2026年7月の改正で、高リスクのAIの義務は2027年12月2日からになった
- EU の外の会社でも、AI の出力が EU で使われる場合は対象になる
最終確認

目次7
ひとことで言うと
EU AI法は、EU(欧州連合)が AI について定めた規則で、正式には Regulation (EU) 2024/1689 という。AI の使い方をリスクの大きさで分け、禁止するもの、厳しい義務を課すもの、AI だと分かるようにする義務を課すものを決めている。EU の中の会社だけでなく、EU の外の会社でも、EU で AI を売る場合や、AI の出力が EU で使われる場合は対象になる(第2条)。
身近な例は、会社のサイトに置くチャットボットだ。人と直接やりとりする AI は、相手が AI と話していると分かるように作ることが求められる(第50条1項)。
このページは、EUR-Lex に載る条文と欧州委員会の説明をまとめたもので、法的な助言ではない。TRAIL は法律事務所ではない。自社が対象になるか、どの義務がかかるかは、公式の条文で確かめる必要がある。
仕組み
欧州委員会は、AI法がリスクを4つの段階に分けていると説明している。
- 許容できないリスク:禁止される。欧州委員会は9つの行為を挙げる。社会的な行動などで人を点数づけすること、職場や学校で感情を推定すること、ネットや防犯カメラの顔画像を無差別に集めて顔認識のデータベースを作ることなどだ。9つ目は、同意のない性的な画像や、児童の性的虐待の素材を生成する AI(いわゆる「ヌード化」アプリ)で、2026年の改正で加わった。
- 高リスク:健康、安全、基本的な権利に深刻なリスクを生みうる使い方。重要なインフラ、教育、雇用、信用スコア、国境管理などが例に挙がる。リスクの評価、データの質、記録、文書、人による監督などの義務がかかる。
- 透明性のリスク:チャットボットや生成AI。人が AI とやりとりしていると知らせること、AI で作ったコンテンツを識別できるようにすることが求められる。
- 最小限のリスク:AI を使うゲームやスパムの選別など。AI法は新たな規則を設けていない。
これとは別に、幅広い作業をこなせる「汎用AIモデル」の提供者にも義務がある。第53条はモデルの技術文書を作ること、モデルを組み込む事業者に情報を渡すこと、EU の著作権法に従う方針を持つこと、学習に使ったデータの要約を公開することを求める。
条文は、AI システムを作って市場に出す側を「提供者」、自分の仕事で AI システムを使う側を「導入者」(deployer)と呼び、それぞれに別の義務を定めている。
AI法は段階的に適用される。欧州委員会の AI Act Service Desk と、改正後の第113条によると、日程は次のとおりだ。
| 日付 | 適用されること |
|---|---|
| 2024年8月1日 | 発効 |
| 2025年2月2日 | 定義、AI リテラシー、禁止(8つ) |
| 2025年8月2日 | 汎用AIモデルの規則。加盟国は担当の当局を指定し、罰則の法令を定める |
| 2026年8月2日 | 規則の大部分。透明性の義務(第50条)。汎用AIモデル、禁止、透明性、AI リテラシーについて執行が始まる |
| 2026年12月2日 | 新しい禁止(性的なディープフェイクと児童の性的虐待の素材)。2026年8月2日より前に出した生成AIの、第50条2項への対応の期限 |
| 2027年12月2日 | 附属書IIIの高リスクの AI(雇用、教育など) |
| 2028年8月2日 | 附属書Iの高リスクの AI(エレベーターやおもちゃなど、製品に組み込むもの) |
AI法の日程は、2026年7月27日に発効した改正で変わった。改正の正式な名前は「Digital Omnibus on AI」で、欧州委員会は「AI Omnibus」とも呼ぶ。2025年11月19日に提案され、2026年5月7日に政治合意に達した。官報には Regulation (EU) 2026/1744 として2026年7月24日に載った。当初の条文では、附属書IIIの高リスクの AI の義務は2026年8月2日から、附属書Iのものは2027年8月2日から適用される予定だった。改正後は、それぞれ2027年12月2日と2028年8月2日になった。
このページには、TRAIL の DB の表を載せていない。TRAIL の年表には、AI法そのものを扱った出来事がまだないためだ。
「AI システム」と「汎用AIモデル」の違い
AI法は、AI を使った製品やサービスにあたる「AI システム」と、そこに組み込む「汎用AIモデル」を分けて扱う。
| AI システム | 汎用AIモデル | |
|---|---|---|
| 条文の定義 | 受け取った入力から、予測、コンテンツ、推薦、判断などの出力の作り方を推論する、機械を使ったシステム | 高い汎用性を持ち、幅広い作業をこなせて、さまざまなシステムに組み込めるモデル(大量のデータで学習したものを含む) |
| 主な義務 | 使い方のリスクの段階による(禁止、高リスク、透明性) | 技術文書、組み込む事業者への情報、著作権の方針、学習データの要約の公開 |
| 適用の始まり | 禁止は2025年2月2日、透明性は2026年8月2日、高リスクは2027年12月2日から | 2025年8月2日 |
| 欧州委員会の例 | チャットボット、採用の書類を選別するソフト | 多くの AI システムの基礎になるモデル |
欧州委員会は、とくに能力が高い汎用AIモデルや広く使われるものは、社会全体に関わるリスクを持ちうるとし、その提供者にリスクの評価と軽減を求めている。
仕事でどう関係するか
EU の顧客向けにチャットボットを出すとき
第50条1項は、人と直接やりとりする AI システムの提供者に、相手が AI とやりとりしていると知らせる作りを求める。ただし、状況から見て明らかな場合は除かれる。AI Act Service Desk の日程では、第50条は2026年8月2日から適用されている。
生成AIで作った画像や動画を EU で公開するとき
第50条2項は、文章、画像、音声、動画を生成する AI システムの提供者に、出力を機械で読める形で印をつけ、AI で作ったと検出できるようにすることを求める。第50条4項は、ディープフェイクにあたる画像、音声、動画を作る AI システムの導入者に、AI で生成・加工したと開示することを求める。公共の関心事を伝える目的で公開する文章を AI で作った場合も、開示を求める。人が確認や編集をして、だれかが公開の責任を持つ文章は除かれる。
採用や与信の審査に AI を使うとき
欧州委員会は、採用の書類を選別するソフトや、ローンの可否につながる信用スコアを、高リスクの例に挙げている。附属書IIIの高リスクの AI の義務は、改正後の条文では2027年12月2日から適用される。EU で人事や金融の仕組みに AI を使う予定があるなら、どの区分に入るかを条文で確かめる目安になる。
社員に AI を使わせるとき
第4条は、AI システムの提供者と導入者に、AI を扱う社員などの AI リテラシーを育てる措置を求める。改正後の条文は、個人に特定の水準の AI リテラシーを保証することまでは求めないと定めている。欧州委員会は、AI リテラシーの義務の執行が2026年8月2日から始まるとしている。
注意点と限界
- このページは法的な助言ではなく、TRAIL は法律事務所ではない。義務の有無や中身は、EUR-Lex の公式の条文で確かめる必要がある。
- EUR-Lex の改正を反映した版(統合版)は、確認のための資料で、法的な効力を持たないと断っている。効力があるのは官報に載った文書だ。
- 日程は改正で変わることがある。第112条は、欧州委員会が附属書IIIの一覧と禁止の一覧の見直しの要否を毎年評価すると定めている。
- 対象から外れるものもある。軍事や国防だけに使う AI、科学研究だけのために作る AI、個人が仕事以外で使う場合などだ(第2条)。
- 違反には制裁金がある。第99条は、禁止に違反した場合、最大3,500万ユーロか、企業なら前年の全世界の売上高の7%の高いほうを上限とする。第50条の透明性の義務などの違反は、最大1,500万ユーロか3%の高いほうが上限だ。中小企業(スタートアップを含む)では、低いほうが上限になる(第99条6項)。
よくある質問
EU AI法はいつから適用されるか
段階的に適用されている。2024年8月1日に発効し、禁止は2025年2月2日、汎用AIモデルの規則は2025年8月2日、規則の大部分は2026年8月2日から適用された。改正後は、高リスクの AI の義務が2027年12月2日と2028年8月2日から適用される。
日本の会社にも関係するか
関係することがある。第2条は、EU の外にある提供者でも、EU で AI システムや汎用AIモデルを市場に出すなら対象になると定める。EU の外の提供者や導入者でも、AI システムの出力が EU で使われる場合は対象になる。
ChatGPT のような生成AIはどう扱われるか
モデルと、それを使ったサービスで分けて考える。使っているモデルが汎用AIモデルにあたれば、その提供者には第53条の義務がかかる。文章や画像を生成する AI システムの提供者には、出力に機械で読める印をつける第50条2項の義務がかかる。
高リスクの AI の義務は延期されたのか
改正で適用の日が変わった。当初の条文では、附属書IIIの高リスクの AI の義務は2026年8月2日から適用される予定だった。2026年7月27日に発効した改正で、2027年12月2日からになった。製品に組み込む附属書Iのものは2028年8月2日からだ。
個人が AI を使うだけでも対象になるか
仕事以外の個人的な利用は、導入者の義務の対象外だ。第2条10項は、個人が純粋に私的で職業と関係のない活動で AI システムを使う場合、導入者の義務を適用しないと定めている。
関連する用語
出典
- Regulation (EU) 2024/1689 (Artificial Intelligence Act)EUR-Lex(欧州連合)
- Regulation (EU) 2026/1744 (Digital Omnibus on AI)EUR-Lex(欧州連合)
- Consolidated text: Regulation (EU) 2024/1689(27.07.2026)EUR-Lex(欧州連合)
- AI Act | Shaping Europe’s digital future欧州委員会
- Timeline for the Implementation of the EU AI Act欧州委員会(AI Act Service Desk)
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)