ワールドモデルとは?意味・仕組みとGenie 4など最新の動き(2026年11月時点)

ワールドモデル

世界モデル / World model / World Models

ワールドモデル(世界モデル)とは、AIが周りの環境の仕組みを学び、この先どうなるか、自分が行動すると何が変わるかを予測してシミュレートするモデルのこと。

要するに

  • 観測を小さく縮めて次の状態を予測し、その中で行動を練習できるようにする
  • Genie 4 や GWM-1 は、操作に応じて映像の世界をリアルタイムに作る
  • 長く動かすと細部や物の位置がずれることがあり、操作できる幅もまだ狭い

最終確認

中に陶器の小さな丘の景色が入ったすりガラスの球と、その中に立ちのぼる紫のやわらかな光

世界モデルと、映像から先を予測するモデルの出来事

TRAIL の DB の7件。各行の確認日に、出典に書かれていた値です(最新の確認は)。

  1. Sora・モデル

    Sora を技術レポートで初公開

    公式の出典最終確認

  2. Runway・モデル

    世界モデル GWM-1 を発表

    公式の出典最終確認

  3. FLUX・企業

    FLUX 3 x mimic を発表

    公式の出典最終確認

  4. Runway・モデル

    GWM Worlds 2 を研究プレビュー

    公式の出典最終確認

  5. Runway・企業

    Kinetix のチームが合流

    公式の出典最終確認

  6. FLUX・モデル

    FLUX 3 Action を公開

    公式の出典最終確認

原論文と関連研究

TRAIL の論文解説4本。年は論文の初公開の年です。

目次8

ひとことで言うと

ワールドモデル(世界モデル、World model)は、AI が周りの環境の仕組みを学び、この先どうなるか、自分が動くと何が変わるかを予測するモデルだ。Google DeepMind は2025年8月の Genie 3 の発表で、世界の理解をもとにその一部をシミュレートし、環境の変化と行動の影響をエージェントが予測できるようにする AI システムだと説明している。

たとえば車を運転する人は、ハンドルを切る前に「こう切ればこう曲がる」と頭の中で先を思い浮かべる。2018年の原論文も、人は限られた感覚から頭の中に世界のモデルを作り、それをもとに決めて動く、という話から始めている。ワールドモデルはこの頭の中の模型を AI に持たせる考え方だ。

仕組み

2018年3月に David Ha と Jürgen Schmidhuber が発表した原論文「World Models」(TRAIL の解説)は、ゲームを解くエージェントを3つの部品に分けた。

  1. 見る(V):ゲームの画面のような観測を、小さな数値の組に縮める。論文は VAE(画像を圧縮して元に戻せるように学ぶモデル)を使った。
  2. 先を予測する(M):縮めた数値の並びと自分の行動から、次の瞬間の数値を予測する。論文は RNN(順に並んだデータを扱うモデル)を使い、答えを1つに決めずに確率の分布として出させた。
  3. 決める(C):V と M が出す数値だけを見て、次の行動を選ぶ。論文は C をわざと小さくし、複雑さの大半をワールドモデル(V と M)に置いた。

論文はさらに、エージェントをワールドモデルが作る「夢」の中だけで訓練し、身につけた行動の方針を実際の環境に戻して使えたと報告した。行動を試して報酬から学ぶ強化学習の練習を、本物の環境の外でできるということだ。

その後、ワールドモデルは映像を作る方向にも広がった。

  • 2024年2月の Genie の論文は、ラベルの付いていないインターネットの動画だけから学び、文章、合成した画像、写真、手描きの絵から、操作できる仮想の世界を作るモデルを示した。どの操作をしたかという正解のラベルなしで学べる点を、それまでのワールドモデルの研究との違いに挙げている。
  • 同じ月に OpenAI は Sora の技術レポートで、動画生成のモデルを大きくすることが、物理世界の汎用のシミュレーターをつくる有望な道だとした。
  • Genie 3 はそれまでに作った映像をふまえて1コマずつつなげて作る。DeepMind は、この作り方は時間がたつほど誤差がたまりやすく、動画を丸ごと作るより難しいと説明している。

表で見る最新の状況

上の年表は TRAIL の DB からワールドモデルと、映像から先を予測するモデルの出来事7件を並べたものだ。確認日は2026年10月10日から10月28日。

  • 2024年2月15日の「Sora を技術レポートで初公開」は、最大のモデルの Sora が高精細な動画を1分間生成できると説明した。
  • 2025年12月11日の Runway の「世界モデル GWM-1 を発表」は、ロボット向け、探索できる環境、会話するアバターの3種をそろえた。Runway は世界モデルを、環境の内部の表現を作り、それを使ってその環境でこの先起きることをシミュレートする AI システムと定義している。
  • 2026年7月から9月は、ロボットの動きを予測するモデルが続いた。FLUX はロボット企業と映像・動作予測モデルを共同開発し、9月23日には、カメラ画像と関節の位置から将来の映像とロボットの動作を同時に予測する7Bパラメータの「FLUX 3 Action を公開」した。
  • Runway は9月3日に、操作に応じて720p・24fps の映像と48kHzの音声をリアルタイムに生成する「GWM Worlds 2 を研究プレビュー」とし、9月8日には Kinetix のチームが合流してロボット向け世界モデルの研究に加わった。
  • 2026年10月27日の「世界モデル Genie 4 を研究プレビュー」は、音楽や環境音、会話を世界と同時に生成し、文章の指示で天気やカメラ、人物を途中で変えられる。

TRAIL の年表では、2025年12月以降の出来事は、探索できる映像の世界を作るモデルと、ロボットの動作を予測するモデルの2つに分かれて並ぶ。

論文の一覧は、原論文と関連する研究の4本を並べた。2018年の原論文、2019年の MuZero と Dreamer は、学んだモデルの中で先を予測し、行動を決める方法だ。2025年6月の V-JEPA 2 は、大量のインターネットの動画で学んだあと、少しのロボットの動画で追加学習し、物をつかんで置く動作を画像で示した目標に向けて計画できたと報告した。

ワールドモデルと動画生成AIの違い

ワールドモデル 動画生成AI
何を受けて作るか キー操作、カメラの向き、ロボットへの指令などの行動を受けて、続きを作る 文章や画像の指示を受けて、動画を作る
どう作るか それまでの流れをふまえて1コマずつ作り、操作にその場で応える(Genie 3、GWM-1) Sora は、動画と画像を時空間の小片として扱う拡散モデルで作る
発表元の位置づけ DeepMind は、エージェントを訓練する環境を限りなく作れるとしている OpenAI は、動画生成のモデルを大きくすることがシミュレーターへの道だとした

2つの技術は近い。Runway の GWM-1 は、同社の動画生成モデル Gen-4.5 の上に作られ、1コマずつ作りながら、カメラの位置やロボットへの指令、音声などの操作に応える。

仕事でどう関係するか

ロボットの開発で、実機での試験を減らしたいとき

Runway は GWM Robotics の使い道として、ロボットの制御モデルを実機に載せる前にワールドモデルの中で試すことを挙げ、実機の試験より速く、同じ条件を再現しやすく、安全だとしている。新しい物や作業の指示を足した合成データを作り、学習用のデータを増やす使い方も示している。こうした発表を読むときは、どのロボットのどの作業で試したかを確かめると、自社の現場に近いかどうかを判断できる。

ゲームや体験型の展示の試作を早く見たいとき

DeepMind によると、ゲーム開発者が Genie 4 で、思いついた案から歩き回れる試作を数秒で作り、見た目や仕掛けを文章の指示で試す使い方を試している。Genie 4 の公開例は場所を説明する文と、登場する人物や物を説明する文を分けて書いている。

プロンプト
場所:夏の夕方の田舎の駅。木のベンチと古い時刻表があり、遠くに山が見える。
人物:紺の制服を着た駅員が1人、ホームの端に立っている。
操作:カメラはホームに沿ってゆっくり進み、駅員に近づく。

発表に出てくる「世界モデル」の中身を読み解くとき

同じ言葉でも、作るものは会社によって違う。Genie 4 は映像と音を作る。V-JEPA 2 は映像を作らず、動画から学んだ表現の中で先を予測して、ロボットの動作を計画する。発表を読むときは、何を入力にして、何を出力するかを確かめると、自社の使い道に合うかを判断しやすい。

注意点と限界

  • ワールドモデルが作る世界は、長く動かすほど細部や物の位置がずれていくことがある。DeepMind は Genie 4 について、短い時間なら一貫した環境を保てるが、長く動かしたときや複雑な指示を重ねたときに、見た目の細部や物の存在が変わることがあるとしている。
  • Genie 3 の限界として DeepMind は、エージェント自身ができる操作の幅が狭いこと、複数のエージェントのやり取りを正しく再現するのが難しいこと、実在の場所を地理的に完全に正確には再現できないこと、続けて動かせるのが数分であることを挙げている。
  • Sora の技術レポートは、ガラスが割れるような基本的な物理の動きを正確に再現できないことがあると書いている。
  • 2018年の原論文は、エージェントがワールドモデルの不完全なところを利用してしまうことがあると書き、作る環境の不確かさをわざと増やして訓練すると、それを防ぎやすくなると示した。
  • Genie 4 は2026年10月の時点で研究プレビューで、使えるのは信頼できるテスターに限られる。DeepMind は、Genie 4 が作る映像と音声のすべてに電子透かしの SynthID を入れるとしている。

よくある質問

ワールドモデルと世界モデルは同じものか

同じものだ。英語の World model を、カタカナで書くか日本語に訳すかの違いで、TRAIL の年表では「世界モデル」と書いている。

Genie 4 はいつから使えるか

2026年10月27日の発表の時点では、信頼できるテスター向けの研究プレビューだ。DeepMind は、Project Genie の Google AI Ultra 契約者と、Gemini API・Google AI Studio の早期アクセスの協力先に近く提供するとしている。Project Genie では待機リストへの登録を受け付けている。

ワールドモデルと動画生成AIはどう違うか

動画生成AIは指示に合う動画を作り、ワールドモデルは行動を受けて次に起きることを作る。Genie 4 では、キー操作で歩き回ったりカメラを動かしたりしながら、文章で場面を変えられる。

なぜ AGI と結びつけて語られるのか

発表元がそう位置づけているからだ。DeepMind は、豊かなシミュレーションの環境でエージェントを限りなく訓練できるので、ワールドモデルは AGI(人と同じように幅広い仕事をこなす AI)への重要な一歩だとしている。Runway も、ロボットや科学の課題には、世界を経験して失敗から学ぶモデルが必要だと書いている。

ワールドモデルは何に使われているか

発表元が挙げる使い道は、ロボットやエージェントの訓練と評価、ゲームの試作、教育や訓練だ。DeepMind は Genie 3 の世界で、3D の仮想空間向けのエージェント SIMA に目標を与えて動かす試験をしている。

関連する用語

  • 動画生成AI:文章や画像の指示から動画を作る AI
  • 強化学習:行動を試し、報酬から学ぶ方法。ワールドモデルの中で練習させることがある
  • AGI:人と同じように幅広い仕事をこなす AI
  • 合成データ:AI が作った学習用のデータ
  • 拡散モデル:ノイズを少しずつ取り除いて画像や動画を作る方法
  • ツール:Gemini、Runway、FLUX、Sora

出典

公開
執筆
TRAIL編集部(編集方針)

この用語に関係するツール

  • Gemini

    Google

    Google の対話型AI。文章・画像・動画・調査に対応

    • 無料プランあり
    • 画面の日本語あり
    • APIあり

    有料Google AI Plus ¥725/月

    年表
    96件
    最新の更新
    2026.10.30
  • Runway

    Runway

    動画と画像をAIで生成・編集するクリエイティブツール

    • 無料プランあり
    • 画面の日本語なし
    • APIあり

    有料Standard $15/月(年払いは月$12)

    年表
    50件
    最新の更新
    2026.10.23
  • FLUX

    Black Forest Labs

    画像・動画を生成、編集できるAIモデル群

    • 無料プランなし
    • 画面の日本語なし
    • APIあり

    有料API 従量課金(画像) FLUX 3 Image は1Kで1枚$0.048

    年表
    36件
    最新の更新
    2026.10.22
  • Sora提供終了

    OpenAI

    文章や画像から動画を生成したAIサービス(2026年に提供終了)

    • 無料プランなし
    • 画面の日本語なし
    • APIなし
    年表
    21件
    最新の更新
    2026.09.24