GAN(敵対的生成ネットワーク)とは?意味・仕組みと主な論文(2026年11月時点)
GAN(敵対的生成ネットワーク)(がん)
敵対的生成ネットワーク / Generative Adversarial Network / GAN
GAN(敵対的生成ネットワーク)とは、データを作る生成器と、本物か作り物かを見分ける識別器を同時に学習させ、競わせることで本物に近いデータを作れるようにする生成モデルの方法のこと。
要するに
- 生成器と識別器を競わせ、識別器が見分けられないデータを作れるよう学ぶ
- 2014年の原論文のあと、DCGAN、BigGAN、StyleGAN などの改良が続いた
- 学習が不安定になりやすく、2021年の論文は ImageNet などの指標で拡散モデルが上回ったと報告
最終確認

GAN の主な論文
- DCGAN 論文の解説:画像生成で得た特徴の分類への転用Unsupervised Representation Learning with Deep Convolutional Generative Adversarial Networks
- SRGAN 論文の解説:鮮明に見える拡大と画素の正確さの評価Photo-Realistic Single Image Super-Resolution Using a Generative Adversarial Network
- Wasserstein GAN 論文の解説:生成モデルの学習信号を見失わないWasserstein GAN
- CycleGAN 論文の解説:対応画像なしで見た目を変えるUnpaired Image-to-Image Translation using Cycle-Consistent Adversarial Networks
- BigGAN 論文の解説:画像生成の品質と多様性の両立Large Scale GAN Training for High Fidelity Natural Image Synthesis
- StyleGAN 論文の解説:顔画像の特徴を層ごとに制御するA Style-Based Generator Architecture for Generative Adversarial Networks
- StyleGAN2 論文の解説:StyleGANの画像の癖を直す改良Analyzing and Improving the Image Quality of StyleGAN
目次8
ひとことで言うと
GAN(敵対的生成ネットワーク、Generative Adversarial Networks)は、データを作る「生成器」と、本物か作り物かを見分ける「識別器」を同時に学習させる方法だ。生成器は識別器をだませるように、識別器はだまされないように学び、その競争で生成器が本物に近いデータを作れるようになる。
原論文は生成器を偽札を作って見つからずに使おうとする偽造団に、識別器を偽札を見つけようとする警察にたとえている。競争によって両者が方法を改良し、偽札が本物と見分けられなくなるまで進むという説明だ。
仕組み
Ian Goodfellow らが2014年6月10日に arXiv に出した原論文の流れをまとめると、次のようになる。
- 生成器はでたらめなノイズを受け取り、画像などのデータに変えて出力する。原論文では生成器も識別器も多層パーセプトロン(層を重ねたニューラルネットワーク)で作った。
- 識別器は1つのデータを受け取り、それが学習用の本物のデータである確率を出す。本物と生成器の出力の両方に正しいラベルを付けられるように学習する。
- 生成器は、識別器が間違える確率を高めるように学習する。生成器は本物のデータを直接見ず、識別器を通ってきた勾配(どちらへ直せばよいかを示す値)だけで更新される。
- 識別器と生成器の更新を交互に繰り返す。原論文の実験では識別器を1回、生成器を1回の順にした。
原論文は、両者に十分な能力があれば、生成器が本物のデータの分布を再現し、識別器はどのデータにも確率1/2を出す状態に行き着くと示した。学習も生成も誤差逆伝播法だけで行え、マルコフ連鎖(確率で状態を少しずつ移す計算)が要らない点を利点に挙げている。
学習の初めは生成器の出力が本物とかけ離れていて、識別器が簡単に見破る。原論文は、このままでは生成器が学ぶための勾配が弱くなると書き、目的の式を少し変える方法を示した。
表で見る最新の状況
上の表は、TRAIL が解説した GAN の論文7本を並べたものだ(論文の公開日は2026年11月6日に arXiv で確認した)。
2015年11月19日の DCGAN は、画像に強いCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を生成器と識別器に使い、多くの設定で安定して学習できる構造の決まりを示した。論文の題名は教師なし学習による表現の学習で、識別器が学んだ特徴を画像の分類にも使っている。
2016年から2017年は、用途を広げる論文が続いた。2016年9月15日の SRGAN は画像を4倍に拡大する超解像に GAN を使った。2017年3月30日の CycleGAN は、対になる画像の組がなくても、季節や画風を別のものに変える方法を示した。2017年1月26日の Wasserstein GAN は、学習を安定させ、モード崩壊などの問題をなくすと論文の要旨に書いている。
2018年には規模と画質が上がった。9月28日の BigGAN は ImageNet で、それまでにない規模で GAN を学習させ、クラスを指定する画像生成で当時の最高の成績を出したと報告した。12月12日の StyleGAN は顔の画像で、顔の向きや人物の違いと、そばかすや髪のような細部を分けて扱えるようにした。2019年12月3日の StyleGAN2 は、StyleGAN の画像に出る特有の乱れを分析して直した。
TRAIL の表の7本は、学習を安定させる工夫、用途の拡大、画質の向上の3つに分けて読める。DCGAN と Wasserstein GAN が1つめ、SRGAN と CycleGAN が2つめ、BigGAN、StyleGAN、StyleGAN2 が3つめに当たる。
GAN と拡散モデルの違い
2021年5月11日に OpenAI の Prafulla Dhariwal と Alex Nichol が出した論文と、Latent Diffusion の論文が、GAN と拡散モデルを比べた記述をまとめると、次のとおりだ。
| 項目 | GAN | 拡散モデル |
|---|---|---|
| 作り方 | 識別器と競わせて学んだ生成器が作る | ノイズを段階的に取り除いて作る |
| 生成の速さ | 拡散モデルより速い | 段階を順に計算するため時間がかかる |
| 学習 | 学習が難しく、設定を選ばないと崩れやすい | GAN のようなモード崩壊や不安定さがない |
| 多様性 | 多様性をとらえる力が弱い | データの分布を広く覆う |
Dhariwal らの論文は、当時は画像生成の多くの課題で GAN が最高の成績を持っていたと書いている。そのうえで拡散モデルの構造を改良し、LSUN の寝室・馬・猫の画像と、ImageNet の64×64から512×512までの画像で、FID などの指標で GAN を上回ったと報告した。論文の題名は「Diffusion Models Beat GANs on Image Synthesis」だが、比べたのはこれらのデータでの画像の品質を測る自動の指標だ。その後の画像生成の流れは拡散モデルのページで扱っている。
仕事でどう関係するか
画像を拡大するツールを選ぶとき
SRGAN の論文によると、元の画像との誤差を小さくする従来の方法は、数値の評価は高くても細かい質感が欠けやすい。SRGAN は、拡大した画像と本物の写真を見分ける識別器を使い、本物の写真らしい質感を描かせる。論文はこれを、写真のような画像を「推定する(inferring)」と表現している。図面や証拠写真のように正確さが要る画像では、この違いを判断の材料にできる。
写真の雰囲気をまとめて変えたいとき
CycleGAN の論文は画風の変換、季節の変換、写真の補正などを、対になる画像の組なしで学べると示した。手元に「変換前と変換後」の組がない作業でも、変換の候補になる考え方だ。
人物の顔の画像や動画を受け取ったとき
StyleGAN は人の顔の画像で学習し、顔の向きや人物の違いを分けて操作できるようにした。TRAIL のディープフェイクのページも、生成するモデルの例としてこの論文を挙げている。StyleGAN2 の論文は、改良で生成器の逆算がしやすくなり、生成された画像を作ったネットワークを確実に特定できるようになったと書いている。これは StyleGAN2 の生成器についての記述で、ほかのモデルで作った画像の見分け方を示したものではない。
注意点と限界
GAN は学習が不安定になりやすい。DCGAN の論文は、GAN は学習が不安定で、意味をなさない画像を出す生成器になることが多いと書いている。
モード崩壊も代表的な失敗だ。生成器が多様なノイズを同じような出力にまとめてしまい、似た画像ばかりを作る状態を指す。原論文も識別器を更新せずに生成器だけを学習させすぎると、この状態になると注意している。DCGAN の論文は、すべての出力を1点に集めてしまう失敗がよく見られると書いた。
原論文は、生成器が作るデータの確率を明示的に計算できない点も欠点に挙げた。生成した画像がどれくらいありそうかを数値で直接示せない。
よくある質問
GAN は何の略か
Generative Adversarial Networks の略で、日本語では敵対的生成ネットワークと呼ぶ。2014年の Goodfellow らの論文が、この名前で枠組みを提案した。
なぜ「敵対的」と呼ぶのか
生成器が、本物と作り物を見分ける識別器を相手に競う形で学ぶからだ。原論文は、識別器を生成器に対する敵(adversary)と呼んでいる。
GAN はどんなデータを作れるのか
原論文が実験で作ったのは画像だ。論文はディープラーニングで扱う対象として自然な画像、音声、自然言語を挙げたうえで、実験を手書き数字、顔、CIFAR-10 の画像で行った。TRAIL の表の論文7本もすべて画像を扱っている。
GAN と拡散モデルはどちらが速いか
Dhariwal らの論文によると、画像を作る速さは GAN のほうが速い。論文は、拡散モデルを含む尤度ベースのモデル(データの確率を直接学ぶモデル)は、VAE を除いて GAN より生成に時間がかかると書いている。
関連する用語
出典
- Generative Adversarial Networks(arXiv:1406.2661)Ian J. Goodfellow ほか
- Generative Adversarial Nets(HTML 版)Ian J. Goodfellow ほか
- Unsupervised Representation Learning with Deep Convolutional Generative Adversarial Networks(arXiv:1511.06434)Alec Radford ほか
- Unsupervised Representation Learning with Deep Convolutional Generative Adversarial Networks(HTML 版)Alec Radford ほか
- Photo-Realistic Single Image Super-Resolution Using a Generative Adversarial Network(arXiv:1609.04802)Christian Ledig ほか
- Wasserstein GAN(arXiv:1701.07875)Martin Arjovsky、Soumith Chintala、Léon Bottou
- Unpaired Image-to-Image Translation using Cycle-Consistent Adversarial Networks(arXiv:1703.10593)Jun-Yan Zhu ほか
- Large Scale GAN Training for High Fidelity Natural Image Synthesis(arXiv:1809.11096)Andrew Brock、Jeff Donahue、Karen Simonyan
- A Style-Based Generator Architecture for Generative Adversarial Networks(arXiv:1812.04948)Tero Karras、Samuli Laine、Timo Aila
- Analyzing and Improving the Image Quality of StyleGAN(arXiv:1912.04958)Tero Karras ほか
- Diffusion Models Beat GANs on Image Synthesis(arXiv:2105.05233)Prafulla Dhariwal、Alex Nichol
- Diffusion Models Beat GANs on Image Synthesis(HTML 版 v4)Prafulla Dhariwal、Alex Nichol
- High-Resolution Image Synthesis with Latent Diffusion Models(HTML 版 v2)Robin Rombach ほか
- 公開
- 執筆
- TRAIL編集部(編集方針)